夢のマイホームを購入するときほとんどの人が住宅ローンを組むことになる。この住宅ローンであるが、組んだ後に後悔をする人が後をたたない。夢のマイホーム購入は決してバラ色の人生が待ち受けているとはいえないのである。
住宅ローンを組んだ場合、次のような場面で後悔する人が実に多い。
ご近所トラブルが発生した場合
ご近所づきあいが希薄になった昨今、ご近所トラブルが後を絶たない。騒音、異臭、境界、ごみ屋敷、覗き、盗み、いじめ等、そのバリエーションはさまざまである。ご近所トラブルは個人間の紛争の中でも弁護士もお手上げの最も解決が困難な類型の紛争である。一たび深刻なご近所トラブルが発生してしまったら、基本的にはどちらかが引っ越すしか解決策はないと思ってよい。賃貸であれば多少の引っ越し費用を負担することで難を逃れることができるが、住宅ローンに縛られていてはそうはいかない。
ご近所トラブルは事前に調査をしても避けられるものではない。トラブルに巻き込まれるときは避けようがないのである。
欠陥住宅であった場合
欠陥住宅といえば、近時の旭化成のくい打ちデータ改ざん事件が記憶に新しい。清水の舞台から飛び降りるつもりでマイホームを購入しても、欠陥住宅であったら目もあてられない。くい打ちデータ改ざん事件では販売元の三井不動産レジデンシャルを始め、関与した企業が資金力豊富な最大手であり、補償は何とか受けられそうであるが、これが地方の小規模・中堅ハウスメーカーやマンションデベロッパー、建設会社ではそうはいかない。そのような中堅企業では建替えレベルの欠陥が一たび判明すれば倒産してしまう。
立て直しが必要なレベルの欠陥は稀として、雨漏りや結露といった欠陥はしばしばみられる。賃貸であれば引越せばすむ話であるが、マイホームではやはりそうはいかない。
離婚することになった場合
3組に1組が離婚するといわれる時代、住宅ローン問題に直面する機会が最も多いのは離婚である。マイホームは家族がMAXの時に最適化された間取りで建てられるため、家族が減った離婚後には使いづらい物件となる。
離婚する際、住宅ローンの付いたマイホームをどう処理するかは最も悩みのタネになる。離婚事件を受任する弁護士としては、住宅ローン付のマイホームが資産としてある場合は着手金を3、40万円くらいは上乗せして欲しいのが本音だ。それくらい面倒なのである。
住宅ローンがある場合は、離婚時の財産分与に銀行が第三者として関係してくるので、当事者同士の話し合いではすまなくなる。銀行の承諾なく、居住者や不動産の名義、ローンの名義を変えることは住宅ローン契約上は禁止されており、銀行も容易に承諾はしない。そのため、当事者同士で柔軟な財産分与をすることは困難となり、離婚手続きが長期化することも珍しくない。
転勤することになった場合
大企業に勤めている場合、県外・国外に転勤することはしばしばあることである。しかし、住宅ローン付マイホームがあると家族そろっての転居は困難にあることが多い。この場合、多くの人がいわゆる単身赴任をすることになる。単身赴任をすることになると、会社からの多少の補助はあるものの、家族の二重生活により生活費の負担が大きくなってしまう。さらに、単身赴任による家族の離散に伴い、家族仲が破壊されやすくなる。そして、離婚につながり住宅ローン付マイホームの財産分与の大問題に発展する。
災害・事件が起きた場合
日本は地震、水害、原発といった災害大国であり、常に災害の危険にさらされている。災害が起きた際も、住宅ローン付マイホームの存在が生活再建の足かせになることが多い。
また、マイホーム近辺で殺人事件や暴力団の抗争などの嫌な事件が起きた場合も、住宅ローン付マイホームに住んでいる場合は容易に引っ越しはできない。
住宅ローンを組んでよかったことは?
さて、住宅ローンのネガティブな側面ばかり取り上げてきたが、逆に住宅ローンを組んでよかったとよく聞く場面もある。それはどんな場合かというと、ローン名義人の夫が死んで住宅ローンが夫の団体信用生命保険でチャラになったという場合である。
通常、住宅ローンを組む場合には、ローン名義人が死亡した場合に備えて、生命保険に加入する。まさに命がけで住宅を買うということだ。
そこまでして、みなさんは住宅ローンを組んでまでマイホームを購入したいのだろうか。