法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

民事裁判の初回には被告は来ないのが普通だよ

有名人が当事者であったり、世間を騒がせた系の民事裁判の初回期日はときどき報道されていますね。

なんでメディアが裁判の日を知っているのかといえば、たいていは原告側が司法記者クラブというメディアの裁判関係の担当みたいなところにタレこむからです。もしくは、メディアが独自で調べていたりもするのでしょう。

ところで、裁判系のニュースだと、最後らへんにさらっと「なお、被告の○○は裁判を欠席した。」などと付記されることが多いと思います。

それに対してヤフーニュースのコメントなんかには

  • 逃げやがったww
  • 不誠実だ

といったコメントがしばしば付きます。

しかし、こういったコメントは実は全くの的外れです。というのも、民事裁判の初回期日に被告が出席することはまずないからです。

訴えられてから初回期日までの流れ

原告が訴状や証拠を裁判所に提出すると、一定の審査を経た後、被告のもとに訴状や証拠のコピーが郵送されてきます。そこには、呼び出し状と答弁書催促状なるものが同封されており、その時点で初回の裁判期日は決まっています。初回の裁判期日を決めるにあたって被告の都合は考慮されません。

訴状を受けとった被告は、初回期日の1週間前くらいまでに訴状に対する答弁書を裁判所・原告それぞれにFAX又は郵送します。弁護士に訴訟代理を依頼した場合は、弁護士が代わりにこれを行い、訴訟委任状を裁判所に提出します。

後で説明しますが、答弁書を擬制陳述すると伝えてあれば、初回期日までに次回期日(2回目)の日程の打診が裁判所からきます。

初回期日は片方が出席して入れば足りる

本来裁判は当事者双方(またはその代理人)が出席していなければ進められません。しかし、初回の期日に関しては当事者の片方が出席していれば進めることができます。当事者双方が欠席のままほかっておくと、訴えは取り下げされたものとされてしまうので、初回期日には原告は必ず出席します。

一方で、被告は出席する必要がないので、通常出席はしません。また、初回期日は一方的に決められてしまうので、そもそも既に予定が入っていて出席できないことも多いでしょう。

初回期日は3分で終わる

被告は初回期日を欠席してもいいというだけで別に出席してもかまいません。しかし、出席しても初回期日はやることがほとんどないので、時間の無駄です。

以下に、オーソドックスな初回期日の流れを示します。細かいところは省いていますがほぼこんな感じです。

初回期日の流れ-被告出席編

書記官:「平成○○年(○)○○○号○○請求事件」

裁判官:「えー、原告訴状陳述でよろしいですね。」

原告(代):「はい。陳述します。」

裁判官:「被告、答弁書陳述しますね。」

被告(代):「はい。陳述します。」

裁判官:「では、次回ですが原告は答弁書の主張に対する反論をお願いします。次回日程は○月○日○時でいかがでしょうか。」

原・被:「お受けします。」

裁判官:「それでは、次回期日を○月○日○時と指定します。それでは本日はこれで終了です。」

このように初回期日は速攻で終わってしまうため、被告としてはわざわざ来るほどのものではありません。これは代理人がついている場合でも同じで、被告代理人も通常きません。

被告が欠席した場合の流れは次のような感じです。擬制陳述とは、当事者が欠席した場合でも、陳述をしたという扱いにしてしまう手続です。なお、民事訴訟の場合、陳述といっても訴状や答弁書を一言一句読み上げるわけでなく、「陳述します。」と言えば十分です。

初回期日の流れ-被告欠席編

書記官:「平成○○年(○)○○○号○○請求事件」

裁判官:「えー、原告訴状陳述でよろしいですね。」

原告(代):「はい。陳述します。」

裁判官:「被告から答弁書が出ていますので、擬制陳述とします。次回期日は事前に打ち合わせている通り○月○日○時と指定します。原告は、答弁書に対する反論を次回期日の1週間前には出してください。それでは本日はこれにて終了です。」

このように出席しても欠席してもやることはほとんど変わりません。弁護士が付いている場合なんかは、弁護士は忙しいので、よっぽどのことがないか相当暇でもない限り出席はしないでしょう。メディアを呼んでいて取材や記者会見などを続けてやるような場合とかは来るかもしれませんね。

というわけなので、初回から当事者がわざわざ出席しているような事件は、むしろよっぽど当事者が面倒な人か気合いの入っている場合だと思われます。そういえば某芸能人の離婚事件の被告は初回から本人がわざわざ来ていましたね。

なお、代理人が付いている場合は、本人は通常裁判にきませんので、ニュースとかで「本人は来なかった。」と付記されたりしているのも、そりゃ当たり前だろとしかなりません。