使用者は、労働者を解雇する場合には、少なくとも30日前には解雇の予告をするか、または30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。予告日数と平均賃金の支払を組み合わせることもできます(同条2項)。例えば、10日分の平均賃金を支払えば、予告日数は20日でも足ります。
このような解雇予告義務が使用者に認められるのは、いきなり解雇されてしまっては生活に困ってしまう労働者を保護するためです。
この解雇予告制度ですが、労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合には、労基署の除外認定を受ければ、使用者は解雇予告義務を免れることができます。もっとも、上記解雇予告制度の趣旨にてらして、除外事由が認められる場合というのはかなり制限されています。
裁判で解雇予告手当を請求する場合は付加金を請求できる
解雇予告がない場合の、解雇予告手当の支払は法律上の義務です。そのため、解雇予告手当の支払がなされなければ、労働者は裁判で解雇予告手当を請求することができます。額的には1ヶ月分の給料ということなので、簡易裁判所に提訴することが多いでしょう。
このとき、労働者は解雇予告手当に加え、未払いの解雇予告手当と同額の付加金の支払を請求することができます。要するに2倍の金額を請求できるということです。
付加金とは、未払い残業代や解雇予告手当等を支払わなかった使用者に対して裁判所が支払を命じるいわば罰金のようなものです。最悪、裁判になれば付加金も加えて最大2倍の金額を支払わなければならないというプレッシャーが使用者側にかかるので、付加金の存在により任意での支払が促されます。
この付加金というのは、あくまで裁判で判決が下され、それが確定することにより発生するものなので、任意の交渉や訴訟ではない労働審判などで請求しても認められることはありません。
また、裁判が結審するまでの間に使用者が解雇予告手当相当額を支払えば、違反状態は解消されるので、付加金の支払は命じられません。このため、残業代請求訴訟では、敗訴濃厚な使用者側が、結審間際に残業代を供託することがしばしばあります。
解雇予告手当を請求したい人は、この付加金というのも頭に入れておくとよいでしょう。