法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

刑事事件の被害者への謝罪文の書き方

刑事事件で加害者が被害者に謝罪文を書くということはよく行われている。本当に被害者に謝罪したいというものから、単に加害者が自分の刑事処分を軽くしたいという思いから書く場合もあるだろう。もっとも、謝罪文なんてものは実際上刑事処分や量刑にまず影響しないと思われる。刑事処分を軽くするにはなんといっても金である。このことは以前も記事にしたことがあった。

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とはいえ、加害者からの謝罪文を読んで、被害者が示談に応じてくれたり、被害届を取り下げてくれたりすることはありえないことではない。そのため、加害者から謝罪文を出したいと言われて拒否する弁護士はいないだろう。

謝罪文に何を書くかについては、被害者の受け取り方次第なので、正解などはないと思われる。ある被害者にとっては感銘を受けて示談に応じてくれるような内容でも、他の被害者にはかえって被害感情を逆なですることもある。

それでもどうせ書くならば、第三者が読んでアチャーと思われない内容にしたい。正解などはないが、僕が意識している点は次のとおりだ。

  1. 犯罪行為について率直に謝罪する
  2. 被害者の被害状況について気にかける
  3. 犯行動機を明らかにする
  4. 今後の被害弁償の方法
  5. 自己本位的なことを書かないこと

1.犯罪行為について率直に謝罪する

まずは、とにかく自分が行った行為について謝罪することが重要だ。言い訳や長々とした前置きは必要ない。そもそも被害者は、加害者からの手紙なんて読みたくないのだから、ごちゃごちゃとしたことは書くべきでない。ただひたすら謝るのみである。

2.被害者の被害状況について気にかける

自分の刑事処分を有利にしたい気持ちが強すぎる加害者は、被害者の状況について関心を有していないことがほとんどだ。謝罪文にもそれが現れている。

例えば傷害事件の場合、普通の人であれば、他人に怪我をさせてしまったら、怪我の状況はどうなのか、痛い思いをさせてしまって申し訳ないという気持ちが出てくるはずだ。そのような被害者の被害状況について気にかける言葉がない謝罪文は自己本位的だなあと思えてしまう。

3.犯行動機を明らかにする

被害者は、「なんで自分がこんな目に会わなければならないんだ」と思っている。そのため、被害者は、加害者がどうして犯罪行為をしたかについては強い関心がある。

多くは身勝手な理由なので、犯行動機を書くことは被害感情を逆なでするリスクがあるのはたしかだ。それでも、犯行動機がいかに身勝手なものだったと思い知ったということを書くことは意義があるだろう。

あまりにも身勝手すぎたり、言い訳じみている場合は書かない方がよいかもしれない。

4.今後の被害弁償の方法

今後の被害弁償について書くことは重要である。被害弁償の方法(支払方法、原資)などについて、なるべく具体的に書ければよりよい。できない約束は当然してはならない。確実にできる方法で、被害弁償の方法を具体的に書くことは効果的だろう。結局は金であるという真理にもつながる部分である。

もっとも、被害弁償を受け取るか否かは被害者の自由なので、金を払えばよいだろうというニュアンスを出さないように。

5.自己本位的なことを書かないこと

初めて謝罪文を書いてもらった場合、多くの謝罪文が自己本位的な内容となっている。

「許してください。」「身柄拘束を受けて苦しい思いをした(食事ものどを通らない等)」「釈放されたら更生したい」等

許すかどうかは被害者が自由に決めることだし、被害者は加害者よりも苦しんでる。はっきし言っちゃえば、被害者は加害者にできれば死んでほしいくらいに思っている。加害者が塀を出て更生することなど被害者は本心では望んでいない。

自己本位的な文章は、被害者の被害感情を逆なでさせるし、こういう自己中心的な考えだから犯罪を起こすのだろうと反省を疑われる。

形式面

丁寧な字で書くのは当然として、宛名、「謝罪文」というタイトル、書いた日付、差出人の署名をしっかり書いておこう。おそらく裁判官はその4か所しか読んでいない。

用紙は派手なのでなければなんでもいい。僕が良く差し入れているのはコクヨの横書きの便箋だ。

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