法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

弁護士等の法律実務家が読むべき労働事件の実務本まとめ

弁護士等の実務家が読むべき労働事件に関する実務本をまとめました。優先順位の高い書籍順にならべています。

1.労働事件審理ノート第3版

要件事実等、労働事件の基礎的な事項が事件類型ごとにまとめてある本です。これを読まずに労働事件を扱うなどもはやヤブというくらい必読の一冊です。裁判官が書いた本です。

2.労働関係訴訟の実務

こちらも裁判官が書いた本です。労働事件の累計ごとに論点等がまとめてあります。労働事件審理ノートよりも個々の記述は詳しいです。最新の法改正には対応しておらず、ちょっと古いのが難点。

3.労働法判例百選第9版

労働事件に対応するにあたっては裁判例を知っておくことが大変重要です。少なくとも最新の百選を一読しておくことは必須でしょう。できれば重判も毎年目を通しておきたいです。

4.割増賃金請求訴訟の知識と実務

残業代の請求は、単純そうにみえて意外に複雑です。弁護士の作成書類について裁判所からの不満も多い分野でもあります。日弁連の会員サイトから残業代計算ソフト(きょうとソフト)がダウンロードできるので、そういったツールも活用しましょう。きょうとソフトの詳細は判例タイムズ1436号で解説されているのでこちらも一読しておきましょう。

5.新労働事件実務マニュアル第4版

労働法分野に関する幅広い知識が記載されており、調べ物のとっかかりになる本です。事件処理の過程で使う文書の書式なども充実しています。弁護士に限らず企業の総務・法務部の方も一冊持っておいて損はないです。

6.要件事実マニュアル第5版第4巻 過払金・消費者保護・行政・労働

説明不要の1冊。労働事件審理ノートでカバーされていない要件事実はこちらを参照しましょう。

7.労働関係訴訟 (リーガル・プログレッシブ・シリーズ)

裁判官が書いた本です。必読というほどではありませんが、労働事件審理ノート、労働関係訴訟の実務に加えて持っておいてもよいと思います。

8.労働法第11版補正版

基本書を1冊ということなら菅野本で決まりです。結構な頻度で改訂されるので、数年も経てば本棚の良い肥やしになります。

9.労働相談実践マニュアルVer.7

労働相談実践マニュアルVer.7 | 日本労働弁護団

労働弁護団が出している本です。用途的には新労働事件実務マニュアルと被ります。新労働事件実務マニュアルよりは情報量は少なくさっと読めるので、労働相談の直前などに目を通して知識の確認をしたりするのに向いています。普通の本屋では売ってないので、労働弁護団のサイトで注文するか、弁護士会の本屋で購入してください。

コインチェック弁護団群雄割拠の行方に注目

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コインチェック事件に関連して弁護団が続々と立ち上がっている。現在確認されているだけで既に3つの団体にがコインチェック事件の集団訴訟を宣言している。コンチェック社による円満な解決案が速やかに提示・実行されない限り、今後も続々とコインチェック訴訟に被害者団体や弁護士たちが参入してくるかもしれない。

群雄割拠時代に突入したコインチェック集団訴訟弁護団であるが、今回は既に参入を表明している団体を紹介していこう。

1.コインチェック被害対策弁護団

北周士弁護団長が率いるコインチェック被害対策弁護団は今回のコインチェック事件に関して真っ先に名乗りを上げた弁護団である。

コインチェック被害対策弁護団

北周土弁護士、野田隼人弁護士等、弁護士のツイッター界(いわゆる法クラ)では名の知られている弁護士が団員を務めている。事務所や地域は様々であるが、共著で書籍を執筆している等、結束力と機動力の高いメンバーが揃っている。

 

2.オーセンス系弁護団

北弁護士らに続いて弁護士ドットコムで著名な法律事務所オーセンスの参入も明らかとなっている。こちらはコインチェック被害弁護団準備会というツイッターアカウントが情報を小出しにしているが、オーセンス自体はまだ公式発表はしていないようである。

オーセンスは定型的訴訟の数をこなす力には定評があり、大量の原告をかかえる組織力は単体で十分に持っているだろう。

2018年2月6日追記

コインチェック被害弁護団準備会は2018年2月4日、名称をコインチェック被害者の会とすると発表しました。

3.弁護士法人ITJ法律事務所系被害者の会

ITJ法律事務所も被害者の会結成を支援し、コインチェック事件の集団訴訟に算入を表明している。ITJ法律事務所といえば、アディーレ法律事務所とともに過払い訴訟全盛期に名をはせた事務所であるが、同所のウェブサイトによれば集団訴訟のノウハウ集積にも務めてきたとのことだ。

コインチェック被害 - 弁護士法人ITJ法律事務所

4.弁護団戦国時代を制するのはどこか!?

現在、いち早く名乗りを上げたコインチェック被害対策弁護団には問い合わせが殺到しているようであり、同弁護団が一歩先をいっているといえよう。もっとも、弁護士ドットコムなどのメディアをもっているオーセンスの集客力もあなどれない。また、大量事件の事務処理能力には定評があるA法律事務所やB法律事務所の新規参入も気になるところだ。

弁護士増員効果により、日本もようやくアメリカらしくなってきたようで今後の展開に目が離せない。

ネットの誹謗中傷対策をビジネスにしたい人が読むべき本・サイト

親愛なるイケハヤ師が誹謗中傷対策をビジネス化する同士を集めているそうです。

そこで、イケハヤ師の同士になろうとネットの誹謗中傷対策についてこれから知見を深めたい人向けに、読むべき書籍・サイトをまとめました。どちらかというと弁護士向け。非弁提携にはならないよう注意してね!

1.インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル<第2版>

これ1冊あれば削除・発信者情報開示等の誹謗中傷対策業務は一通りできるようになります。個人的には一番好きな本です。

2.ケース・スタディ ネット権利侵害対応の実務-発信者情報開示請求と削除請求

弁護士の神田先生、中澤先生、清水先生という削除界隈のドリームチームによって書かれたのが本書。1に加えてもう1冊ということならこれでしょう。価格を上げようとしたのか、でかくてちょっと読みにくいのが難点。

3.名誉毀損の法律実務

上記2冊は手続的なところを説明した話です。ですが、そもそもどのような表現が違法な誹謗中傷になるかを知らなければ話になりません。少々高いですが名誉毀損に関する書籍としてはこの1冊で決定です。

4.プライバシー権・肖像権の法律実務〈第2版〉

誹謗中傷の際、同時に問題となるのがプライバシー権です。プライバシー権に関する書籍も読んでおかねばなりません。

5.判例タイムズの以下の記事

判例タイムズの以下の記事を読んでおくと、裁判所に提出する書面の書き方の参考になります。

  1. 東京地方裁判所民事第9部におけるインターネット関係仮処分の処理の実情(1395号25頁)
  2. 名誉毀損訴訟解説・発信者情報開示請求訴訟解説(1360号4頁)

6.プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト

いわゆるテレサ書式による削除請求等をする際に参照するサイトです。

プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト

7.IT弁護士カンダのメモ

まだ削除請求等が一般的でなかった頃から誹謗中傷対策を専門的に行ってきた弁護士神田先生のブログです。今みたいに誰でもパカパカ削除や開示ができるようになったのは神田先生の功績といっても過言ではないでしょう。

IT弁護士カンダのメモ。

結局儲かるのは逆SEO?

以上誹謗中対策をビジネス化したい人達が読むべき書籍・サイトのご紹介でした。もっとも、以上の情報は、発信者の特定・記事の削除・損害賠償請求に特化しています。これらの業務は単価がたいして取れないので数をこなさないと稼げません。2・5ちゃんねる等の海外法人相手だったら、登記をとったりするのも数をこなさないと割に合わないですしね。

誹謗中傷対策で実際儲かるのは逆SEOです。削除や損害賠償請求の単価はせいぜい1件数十万とかでしょうが、企業と契約している逆SEO業者は毎月数十万から数百万円の報酬をもらっています。こちらの話はまた別の機会にしてみましょう。