法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

国選弁護人費用って本当はタダじゃないって知ってた?

刑事事件で逮捕・勾留されたり起訴された場合、多くの人は弁護士を付けます。私選弁護人を頼める人は私選で、そうでない人は国選対象事件については国選弁護人を選任してもらいます。

この国選弁護人ですが、しばしば国が無料で弁護士を付けてくれる制度などと説明されています。しかし、この国選弁護人の費用ですが、被告人が負担させられることがあるって知ってましたか?

根拠となる条文はこちら

刑訴法181条1項

刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでない。

条文を読む限り、被告人が訴訟費用を負担するのが原則で、例外的に貧困の場合には負担させないこととするということになっています。ここでいう「訴訟費用」には証人の日当などの他、国選弁護人に支払う報酬が含まれています。

国選弁護人が選任されている人は、そもそも金がない人がほとんどですので、実際に国選弁護人費用を負担している被告人は多くありません。条文上の原則と例外が、実態上は逆になっています。

もっとも、いわゆる在宅起訴された事件や保釈で身柄解放された事件ではしばしば訴訟費用の負担を被告人が命じられることがあります。在宅起訴の場合は働いている人が多いですし、保釈金を払う金があるなら弁護士費用も払えということなんでしょうね。

国選弁護人の費用は起訴前の勾留段階から選任された場合でだいたい15~20万円、起訴後に選任された場合で8万円くらいです。本来の弁護士費用に比べればかなり安いですが、被告人にとっては罰金みたいに感じてしまう程度の額です。ちなみに裁判員裁判になると国選弁護人の費用は100万円近くいくこともあるので、負担を命じられると結構大変です。

訴訟費用の負担を命じられるか否かについて明確な基準があるわけではありません。結構、担当裁判官の趣味みたいなところがあり、訴訟費用の負担をバンバン命じる裁判官もいればそうでない裁判官もいます。

示談が済んでいたり、示談が不要な事件で裁判官が被告人に「収入はいくらあるの?」「貯金はいくら?」などと聞いていると、あー訴訟費用の負担を命じる材料を探しているのかななどと思ってしまいます。国選弁護人としては、裁判官が訴訟費用の負担をさせようとしていると感じたときで、被告人に金がないときは、その旨を補充でしゃべらせたりもします。

まあ、悪いことをするといろいろ金がかかるということです。