以前にも書いたことがあるが離婚の際の財産分与の山場となるのは、住宅ローンの残った住宅の処理である。
財産分与請求権には、①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与の要素があるが、主に問題となるのは①の清算的財産分与である。
清算的財産分与とは、夫婦の共同生活において形成された共有財産の清算を目的とする財産分与である。
結婚前から持っていた財産や親の遺産などは財産分与の対象とならない。財産分与の対象となるのは、夫婦が協力して形成した財産である。そのため、結婚後に購入した住宅は原則として財産分与の対象となる。
しかし、この住宅こそがやっかいのもとになるのだ。平均的な収入の夫婦であれば、住宅はローンを組んで購入することが多いからだ。
住宅については、住宅の評価額から残りのローンを引いた余りが財産分与の対象となる。
評価額が残ローンを上回っており、夫婦が住宅を売って清算することを望んでいる場合は特に問題はない。例えば、住宅の評価額が3000万円で、残ローンが2000万円の場合は、通常差額の1000万円を二人で仲良く分けることになる。
しかし、評価額よりも残ローンの方が多い場合、いわゆるオーバーローンの場合は問題が生じる。
さっきの場合とは逆で、住宅の評価額が2000万円で、残ローンが3000万円の場合はどうなるだろうか。公平な精神を持っている方ならこう考えるだろう。差額の借金1000万円を二人で仲良く分ける。
しかし、借金の分与には消極的なのが実務だ。この場合、ローンの債務者(多くの場合は夫だろう)がその後も借金を負担し続けることになる。そして不要な住宅だけが手元に残る。この点は、借金も仲良く二人で分けるものだと誤解している人が多いので注意が必要だ。
借金が平等に考慮されるのは、あくまでプラスの財産がある場合である。上の事例の場合、住宅の他に1500万円の貯金があれば、1500万円(貯金)+2000万円(住宅)から3000万円(残ローン)引いた差額の500万円を二人で仲良く分けることになり、借金も平等に考慮してもらえる。
しかし、借金の方が多い場合は、借金の名義人が割をくうようになっている。
住宅をローンで購入する際は、このようなリスクがあることも十分覚悟した上で、購入すべきだ。