刑事弁護の弁護士には、国がつけてくれる国選弁護人と、自前で雇う私選弁護人とがいます。それぞれの報酬は、被疑者段階から判決まで依頼した場合、国選が15万円程度、私選が100万円程度です。
「私選と国選どっちがいいか?」と聞かれることが多々ありますが、はっきしいって担当する弁護士次第なところがあるので、一概にどっちがいいとはいえません。国選でも有能で熱心な弁護士にあたることはありますし、私選でも全然動かない弁護士にあたることもあります。
しかし、僕が仮に被疑者になって弁護士を付ける必要が出た場合は私選弁護人を選ぶでしょうね。それは、国選弁護人の報酬の安さ自体が問題なのではなく、その報酬体系がモラルハザードを生みやすい構造になっているからです。
弁護士報酬とモラルハザードの問題については前回紹介しました。
身柄拘束が長引くほど報酬が高くなる報酬体系
被疑者段階の国選弁護人の報酬体系は、身柄拘束期間の長さと接見回数によって算定されます。
他方で、身柄拘束を解いた場合にも成功報酬の設定が一応ありますが、非常に安くなっています。
例えば、ある事件で勾留期間マックスの20日間まで国選弁護人を務めた場合の報酬は、だいたい12万円くらいになります。
一方で、国選弁護人就任後、直ちに勾留決定に対する準抗告という手続をとって、勾留開始から数日後に身柄拘束から解放した場合の報酬は、8万円程度です。
しかし、弁護士にとって手間がかかるのは、圧倒的に後者の準抗告手続を取る場合です(*)。
しっかり働くよりも、特になにもせずに身柄拘束期間を長引かせておく方が報酬が高くなってしまう国選弁護人の報酬体系は、弁護士のモラルハザードを招きやすいものになっています。
僕が身柄拘束をされてしまったら、勾留決定に対する準抗告は絶対にやってもらいたいので、準抗告の着手と成功にそれぞれ報酬を設定しますね。
*僕は手間はかかるものの、準抗告が成功した場合の達成感がそれなりに快感なので、まず成功しない事案でない限り、準抗告は申し立てています。それが被疑者にとっても最善の弁護活動であります。