法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

募金詐欺、堂々と記者会見してメディアも騙される

なかなか大胆な募金詐欺行為が行われたようである。

6歳児の心臓移植「うそ」募金呼びかけた女性が謝罪 - 社会 : 日刊スポーツ

小学1年生の男児に心臓移植が必要であるとして、男児を救う会の代表の叔母が募金を募っていた件で、心臓移植が必要との事実は全くなく詐欺であったことが発覚した。叔母は、わざわざ厚労省の記者クラブで記者会見までし、一部メディアが募金呼びかけの報道をしてしまったようである。

男児やその両親は叔母による募金活動を全く知らなかったようであり、完全にとばっちりを受けた形らしい。報道では謝罪したというところで終わってしまっており、叔母の刑事立件については詳細が不明であるが、これは完全な詐欺罪である。悪質性も高く、既に相当額の入金がなされていたなら実刑も十分考えられる事案であろう。

ところで、単なる募金詐欺であれば足のつきにくい街頭募金でもやってればいいのにと思うところであるが、今回の被疑者は実在する甥の名を明らかにして記者会見までやっている。記者会見を利用しようという発想自体、なかなか素人では出てくるものではなく、おそろしく大胆な犯行である。

それにしても、今回の事件でマスコミの記者会見ベースの報道では全く裏付けなんてされていないことが明らかになった。今回の事件では、マスコミが両親に直接裏をとれば被疑者を後押しするような報道をしなくてすんだものの、全く裏付けをとっていないため見事に被疑者に利用されてしまった形になる。

マスコミの記者会見ベースの報道なんて信用できるものでなく、話半分に聞いておくべきものであることが本件により確認された。

トランプ大統領が教えてくれたギャップの重要性

昨日のアメリカ大統領選ではメディアの大方の予想に反しドナルド・トランプ候補が次期アメリカ大統領に選出された。

数々の暴言や排外主義、保護主義的な経済観がメディアに取りざたされ、トランプ氏が大統領に選出されたら為替は1ドル90円台、日経平均は1万5000円まで下がるといった評論が数々打ち出された。

実際、トランプ氏が優勢との選挙速報が出されるやいなや、予想通りNYダウ先物は700ドル超の下げ、日経平均も一時1000円超安、ドルも円に対し101円まで売られ、市場は大混乱に陥った。

しかし、トランプ氏が勝利演説をしたとたん風向きはいっきに変わった。トランプ氏の勝利演説の内容はこうだ。

ヒラリーの国への献身に心から感謝

全ての人に手を差し伸べる、アメリカ国民は一致団結しよう

全ての国に公正に対応し、パートナーとして活動する

トランプ氏はこれまでの報道とは打って変わり極めてまともな演説に終始した。この演説を受け、市場の評価は一転し現時点までドルは105円超まで買われ、日経平均も900円超上昇している。

トランプ氏の勝利演説はあたりさわりのない極めてまともなものであるが、格別優れているとか際立ったものは見受けられない。ちょっとした優等生が用意するような内容である。

にもかかわらず、どうしてトランプ氏の評価が一転したのだろうか。それはトランプ氏が作り出したギャップによるところが大きい。

トランプ氏は数々の侮辱的、差別的発言を繰り返すことで、「こいつは排外的でとんでもない奴だ。」との印象を国民に与えることに成功した。この時点でトランプ氏のイメージのマイナスへの振れ幅は非常に大きい。トランプ氏はその状態を認識しつつ、態度を変え、ニュートラルな極めてまともな状態に戻すことで、マイナスから0までの大幅な上げ幅を作り出したのである。

これは、不良がたまにまともなことをすると、客観的には大したことでなくても過剰に称賛される現象と同一である。人の評価は、感情によるところが大きいので、絶対的な数値のようなものでなく、相対的なギャップが重視される。トランプ氏はこの相対的なギャップを作り出すことで、ここぞというときに大したことをしなくても高い評価を得たのである。事実彼は格別すごいことは何もしていない。ただまともことを言っただけである。

このトランプ氏のギャップ創出手法はビジネスでも応用できる。顧客は期待以上の効用を得られたときに深く感動し、その店のファンになる。逆に顧客の期待を下回ったときは、そのサービスが業界の平均水準以上であっても顧客は失望し、その店には二度と来ない。そのため、ファンを作るためには顧客の期待水準をあらかじめ下げておくことが重要なのである。

トランプ氏はそのようなビジネスの常とう手段を見事に大統領選で披露し、盤石な政権を作る基礎を作ったといえよう。トランプ大統領にとっての顧客は国民であり、大統領になる前にあらかじめ国民の期待値を下げておいたことで、今後彼は普通のことをしているだけでも評価されるようになる。

自己破産のメリット・デメリットの本当のところ

自己破産というと良いイメージを持つ人はあまりいないと考えられます。しかし、法律実務に携わっている者からすれば、自己破産ほどメリットの高い制度はなく、本来自己破産をすべき人がどうして自己破産をためらうのかが全く理解できません。

自己破産をしない理由の多くは自己破産の悪いイメージにより増幅されてしまった誤解にあると考えられます。自己破産のメリット・デメリットを正しく理解すれば、借金が返せないレベルの人で、自己破産を選択しないという理由はまずありえません。

自己破産にまつわる誤解

ブラックリストに載ることの不利益

自己破産に向けて支払い停止手続を取ると信用情報機関の事故情報として登録され、5~7年程度、借金やクレジットカードの利用ができなくなります。要するに、ブラックリストに載ってしまうと借金や信用取引ができなくなるということです。これだけです。

しかし、これって何か問題なんですかね。借金を返せないような人が、新たに借金をできなくなったり、リスクのある信用取引ができなくなることはむしろいいことでしょう。

勤務先に自己破産したことがバレる

自己破産をしたことが勤務先にバレることは通常ありえません。勤務先から借金をしていて勤務先が債権者になっているような特殊な場合は別ですが、自己破産情報が勤務先に伝わる可能性は極めて低いといってよいでしょう。自己破産をしたことは官報に掲載されますが、官報なんて普通見ていませんし、ネットの検索結果に出ることもまずありません。

むしろ、自己破産をせずに、借金の滞納が続く方が勤務先に借金がバレるリスクが高いです。なぜなら、貸主が給料を差し押さえる等の手段に出てくるからです。勤務先にバレたくないなら、自己破産をする方がよいでしょう。

自己破産のメリット

免責されれば借金がチャラになる

自己破産のメリットは借金がチャラになることにつきます。金を貸した側からするととんでもない制度なのですが、比較的簡単な手続きで借金がチャラになるというのはとてつもないメリットです。

借金がチャラになるのはもちろん免責許可決定が出ることが前提ですが、免責不許可となるケースは非常に稀なので、まずチャラになると考えてよいでしょう。よく借金の原因がギャンブルや浪費の場合は免責されないと思い込んでいる人もいますが、そのような場合でもほとんどのケースで免責が許可されています。

自己破産が簡単にできるのも問題

個人的には自己破産があまりにも簡単にできるのは問題だと思います。金を貸した側からすれば何の落ち度もないのに、貸した金がなかったことになるなんてたまりません。しかも、法律では一応浪費は免責不許可事由となっていますが、実際にはブランド物やギャンブルに金をつぎ込んだような場合でも、裁量免責で免責になってるケースがほとんどです。金を貸した側からすれば、散々本人は楽しんだくせに借金がチャラになるなんて許せるものではありません。

逆に破産者側からみれば、こんな緩い制度を使わない手はありません。