最近無料で法律相談を提供する法律事務所が増えています。
しかし、本来法律相談といえば安くても30分5000円はする商品のはずです。
なぜ、法律事務所は法律相談を無料で提供できるのでしょうか?
この疑問にシンプルに答えると、単に広告を出すより法律相談を無料化する方がコストが低いからです。
利益の計算というのは、最も手っ取り早い方程式を使うと次のようになります。
利益=(顧客単価-顧客獲得コスト-顧客原価)×顧客数
法律サービスに原価というのはほとんどかかりませんから、利益を上げるには顧客単価と顧客数を上げて、顧客獲得コストを下げることが重要になります。
顧客数を上げるという面で考えられるのは広告を出すことです。しかし、広告を出すには結構な金額がかかります。そこで、相談を無料化することで顧客を引き寄せることが考えられます。この場合にかかるコストは機会損失5000円です。大概の広告より安く済みます。
相談を無料化することは、安い顧客獲得コストで顧客数を増やす一種の方法なわけです。決して、法律事務所が慈善事業でやっているわけではありません。
しかし、この相談無料化ですが、あまり考えなしにやってしまってもよくありません。
法律相談を無料化するときに考えなければならないことは、受任率と顧客単価です。いくら無料相談にきてくれる客が増えても、受任できずに安い事件ばかりきたらただの機会損失でしかありません。
通常、法律相談を無料していない事務所でも、債務整理や交通事故、相続などの事件に限って無料にしている事務所があります。これは、それらの事件が受任率が高いか、単価が高くなることが多いためです。
逆に、パワハラやご近所トラブルといった受任率が低く、単価も安いような事件の相談に特化して無料化しているところはまずありません。あったとしたらまるで商売に向いていません。
以上が法律事務所が法律相談を無料化している理由ですが、僕自身は法律相談の無料化という戦略は好きではありません。
というのも無料化で寄せられる客というのは、要するに価格にうるさい客、金払いの悪い客だからです。交通事故や相続などの事件は顧客自身が懐を痛めて金を払うということはあまりないため、無料化による集客がなんとかうまくいっているにすぎません。他の事件では同じようにはいかないでしょう。
金払いの悪い客を相手にするような商売は、牛丼屋やファストフードなどと同じで、どうしても消耗戦になります。
それよりは良い物を高く買ってくれる客を相手にする方がよっぽど利益率も高く、気持ちも楽なものです。