法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

裁判所が勾留状謄本を誤送付、謝罪はおろか誤送付先に持参させようとする!?

将来報道されかねない事実が某弁護士先生のツイッター・フェイスブックに記載されていました。弁護士が実名で記載していることですから、概ね真実なのでしょう。

流れは以下の通り

とある弁護士の事務所に裁判所から全く無関係の勾留状謄本が届く(誤送付)

とある弁護士が親切に裁判所に誤送付の事実を伝える

裁判所がとある弁護士に謝罪もせず(?)勾留状謄本を持参するよう要求

弁護士が着払いで裁判所に勾留状謄本を送付

送付した勾留状謄本が裁判所から「受け取り拒否」として弁護士の下へ返送される

勾留状とは、検察官から被疑者の身柄拘束(勾留)を請求された裁判所が身柄拘束を許可するときに出す令状の一種です。勾留状は、被疑者には交付されませんが、被疑者や弁護人が謄本(コピー)を裁判所に請求すればもらえます。国選の場合は、受任の打診の際に法テラスからコピーがもらえますが、私選の場合は請求しないともらえません。勾留状がなければ、何の被疑事実で勾留されているのかが正確にわかりませんので、勾留状謄本の交付請求は私選弁護人が必ず行う定型的な業務です。

勾留状には、被疑者の氏名・年齢・住居・職業・被疑事実の要旨などが記載されています。被疑事実の要旨の中には被害者の氏名なども書かれています。プライバシーの中でもかなり秘匿性の高い情報が詰まった書類です(被疑事実が性犯罪だった場合を想像してみてください)。

とある弁護士のツイッター・フェイスブックによれば、裁判所はこの勾留状謄本を全く無関係の弁護士に間違えて送ってしまったようです。間違えて送っているようですので、おそらく交付請求をした本来の弁護人の元には届いていないのでしょう。

これは明白な過失によるプライバシー侵害ですので、被疑者や被害者などから国家賠償請求をされれば、損害額の多寡はともかく、ほぼ間違いなく国が負ける事案となることが予想されます。また、本来の弁護人への勾留状謄本の交付が遅れることになるので、弁護活動が阻害されたとして国家賠償請求を受ける可能性も否定できません。

裁判所としては、このような不祥事が発覚した場合、早急に誤送付先の弁護士に平謝りの上、自ら勾留状謄本を回収しなければならなかったはずです。また、上層部への報告、被疑者・被疑者の弁護人・被害者等の関係者への誤送付の事実の報告・謝罪も当然すべきでしょう。これが、国家機関の危機管理のあるべき姿です。

しかし、裁判所はこともあろうか、誤送付先の法律事務所に勾留状謄本を裁判所へ持参するよう要求したようです。こんなこと全くあってはならない話です。普通は裁判所職員が誤送付先の法律事務所に訪問して回収をするべきです。

これは、社会人としての基礎として、迷惑をかけた相手にさらに迷惑をかけるなという次元の話だけではありません。個人情報の詰まった勾留状謄本の回収を、誤送付先の相手方に委ねることが危機管理として全くなっていないのです。もし、相手方が持参したり送ってくれなければどうするのでしょうか。いつまでも相手方の手元におかせておくのですかね。考えられません。すぐに連絡をして取りに行くべきでしょう。今回も初動を間違ったがゆえに、再び誤送付先に返送されることになってしまい、長い間勾留状謄本が宙に浮いた状態になってしまっています。

裁判所・検察庁などの権力機関は、基本的に相手に来てもらう側の機関です。例えば、刑事裁判を例にしても、証拠を提出する場合、検察官が提出予定の証拠は弁護人が検察庁を訪れてコピーをさせていただくことになっています(もちろんコピー代は自腹)。しかし、弁護人が提出予定の証拠は、弁護人が検察官に送付しなければなりません(FAX代・郵送代は自腹)。検察官が証拠をコピーしに事務所に来てくれることなどありません。裁判所から書類をいただく場合も、基本的には直接取りに行くか、返信用封筒をつけて交付を申請しなければなりません。とても対等な関係とはいえません。

このような扱いが常態化している権力機関に勤めていると社会人としての礼儀もなくしてしまうのでしょう。今回のようなとんでもない対応をしてしまうのもうなづけます。

実は僕も、裁判所ではない別の役所ですが、似たような経験をしたことがあります。そのときは、役所と喧嘩しても良いことはないので、嫌味の一つも言わずに穏便にすませました。おそらく大半の人がそんな感じなのでしょう。大半の人がそんな対応ですませているため、役所の人間はますます勘違いをしていきます。そして、今回の弁護士さんのように声が大きい人にあたってしまって初めて問題化されます。

信用を失墜させてしまうのは、ミスそのものではありません。ミスの後の対応のまずさです。

ミスは小さいうちに開示してリカバーするのが大事 - 法廷日記

今回の件については、弁護士さんの報告が真実であるのであれば裁判所には深く反省してもらいたいものです。

本件の情報源

ttps://www.facebook.com/hayato.tamura.56/posts/763331840454516?pnref=story

追記

その後、偉い人から弁護士さんのもとに謝罪が行き無事解決したそうです。