法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

結婚指輪にまつわる裁判例を集めてみたよ

夫婦の愛の証といえば結婚指輪。最初の数年くらいはきちんと左手の薬指に付けるアレのことです。今回はその結婚指輪にまつわる裁判例を集めてみました。

事例1-配偶者に結婚指輪代金の返還を求めた事例

夫の留学中に妻が不倫相手の子供を妊娠したため、夫が妻に離婚請求した事例。夫は併せて、婚約指輪・結婚指輪の代金26万8000円の賠償を請求した。

(判旨)

婚約指輪,結婚指輪は,婚約及び婚姻の証として贈与される物品であり,婚約,婚姻の成立により贈与の目的は達成される。したがって,婚約,婚姻が成立している本件では,被告(妻)が原告(夫)に婚約指輪,結婚指輪を返還する義務はなく,原告(夫)がその代金を被告(妻)に請求する法的根拠もまた存しない。婚約指輪,結婚指輪の贈与及び返還といった事実関係は,婚姻関係の清算における慰謝料等の算定事情として考慮すべき事項であり,原告(夫)が被告(妻)に代金の返還を請求することはできない。

東京地判平成15年7月14日

結婚指輪の贈与は結婚により目的は達成されるので、その返還や代金の賠償は認められないという判断。ただし、慰謝料の算定事情にはなりえます。

事例2-結婚式場に結婚指輪代金の返還を求めた事例

結婚式場(ホテル)から暴力団員であることを理由に結婚式・披露宴の契約を解除された夫婦が損害賠償を求めた事例。夫婦が用意した結婚指輪には結婚式当日の日付が刻印されており、解除により結婚指輪が使い物にならなくなったとして、結婚指輪代金相当額(80万円)の賠償を請求。

(夫婦の主張)

原告ら(夫婦)は、結婚記念日となる「11月1日」の日付けの刻印をした結婚指輪を注文していた。被告により本件契約を破棄されたため、急いで別の場所を探したが、同日(平成21年11月1日)に結婚式及び披露宴を行える場所を見つけることができず、結婚式及び披露宴の日を変更せざるを得なくなった。したがって、上記結婚指輪は無駄になった。

(裁判所の判断)

解除は適法。損害賠償義務なし。

大阪地判平成23年8月31日

結婚式を挙げたい人は暴力団に入ったり、暴力団員と結婚してはいけませんね。

事例3-結婚指輪を外せと上司が命令した事例

中部電力に勤務していた夫がうつ病に罹患して自殺をしたことが、業務に起因するものであるとして、夫の遺族が労災保険法の遺族補償年金及び葬祭料の不支給処分の取消しを求めた事例。当時の上司は自殺した夫に結婚指輪を外すよう命じたことがたびたびあった。

(判旨)

(上司)は,(自殺した夫)に対して,・・・結婚指輪を身に着けることが仕事に対する集中力低下の原因となるという独自の見解に基づいて,(自殺した夫)に対してのみ,・・・数回にわたって,結婚指輪を外すよう命じていたと認められる。これらは,何ら合理的理由のない,単なる厳しい指導の範疇を超えた,いわゆるパワー・ハラスメントとも評価されるものであり,一般的に相当程度心理的負荷の強い出来事と評価すべきである。・・・そして,上記の叱責や指輪を外すよう命じられたことが,1回的なものではなく,主任昇格後から(自殺した夫)が死亡する直前まで継続して行われているものと認められることからすると,うつ病発症前,また,死亡直前に(自殺した夫)に対し,大きな心理的負荷を与えたものと認められる。

名古屋高判平成19年10月31日

結論としては、自殺の業務起因性を認定し、遺族補償年金等の不支給処分を取消。結婚指輪を外せという上司の言動はパワハラと評価されました。結婚指輪に思い入れのある人にとっては結婚指輪を外せという上司の理不尽な言動によるストレスは多大なものだったことでしょう。

事例4-結婚指輪を投げつけた事例

妻が夫に対し、離婚を請求した事例。夫は離婚原因の有無を争い、また有責配偶者の抗弁を主張。

(認定された事実)

引っ越しの当日の朝,原告(妻)と被告(夫)は,ささいなことからけんかになり,原告は,結婚指輪を被告の頭にぶつけ,被告は原告の顔を平手で打った。

東京地判平成15年4月25日

上記事実は婚姻関係破綻の認定に一部使われたと考えられます。大事な指輪を暴力の道具に使っちゃいけませんね。他に結婚指輪を投げつけた事例としては横浜地判昭和55年8月1日(家事)、山形地判平成19年9月10日(刑事)などがあります。

もうちょっとありましたが、とりあえず今回はこれだけ。