2016.4.8改訂
説明するまでもないと思うが、DVとはドメスティック・バイオレンスの略で直訳すると家庭内暴力である。最近では、デートDVなどと称して恋人間のものも含まれるようだ。
DVは程度がひどければ、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として法律上の離婚原因ともなりうる。
裁判などでDVを主張しても、相手が全面的に認めることはあまりなく、DVを主張する側が立証をしていかければならない。しかし、DVの証拠が全然ないということもよくあることだ。
相手から暴力を受けたら基本的には別れる方向で検討せざるを得ない。相手が離婚や交際をやめることを拒んだり、ストーカー化する場合に備えて、客観的な証拠を残しておくことはとても重要である。証拠が残っていれば、裁判で有利に使えるし、警察に相談する際も真面目に対応してもらえる材料になるだろう。
そこで、DVの証拠の残し方について確認しておきたい。なお、DVには経済的暴力や精神的虐待等も含まれるが、ここでは物理的な暴力行為に限定するものとする。
DVの証拠としては次のものが考えられる
- 医師の診断書
- 写真
- 電話等の録音、メール
- メモ、日記
1.医師の診断書
医師の診断書は、DV事件でよく提出される証拠の一つである。ただし、医師の診断書は必ずしも万能ではないので注意しよう。医師の診断書で客観的に立証できるのは、傷害を負った事実であり、その受傷原因がDVであることまでは必ずしも立証できない。そのため、後述のメモや日記などでの補強が必要である。
2.写真
傷の様子や、壊された物品などの写真も有力な証拠の一つである。生々しい傷跡の写真などは事実認定者に視覚的に訴えることができ、彼らに与えるインパクトも大きい。
3.電話等の録音、メール
いわゆるハネムーン期と呼ばれる安定期に、DV加害者が謝罪をしてくることがある。その際のメールや謝罪の録音などは、加害者の自白なので有力な証拠になる。逆に脅迫的な内容もろだしのものも十分活用できる。
4.メモ、日記
DVを受けた状況のメモやそれを記した日記などを作成することはいろんなところで推奨されているが、相手方がDVを否認している場合にメモや日記だけでDVが認定されることはまずないと考えてよい。メモや日記の証拠価値は裁判ではほとんどない。とはいえ、メモや日記は後日DVに関する正確な主張をするために有用であるし、メインの証拠とはならなくても診断書などの客観的証拠を補強する証拠にはなる。そのため、やはりメモや日記は作成しておくべきである。
メモの作成の仕方としては5W1Hを意識して、いつ・どこで・誰が誰に対して・何を・どのように行ったかをきっかけや経緯を含めてできる限り具体的に書いておこう。一般的には、本人が実際に体験したことというのは具体的に述べられると考えられており、逆に具体性がない供述は信用性を低く見積もられてしまう。しかし、記憶というものは薄れてしまうものであるから、なるべく体験した日に詳細なメモなり日記をつけておくことが重要だ。家族にメールを送るなどしてもいい。
その他、警察に通報するなどの実績作りも有効だろう。それなりに傷害を負っている場合は、逮捕までされることもある。
以上、DVの証拠をみてきたが、男女の不満というものは2倍にも3倍にも盛って話されるのが通常である。そのため、客観的な証拠に基づかない主張というのは基本的には話半分にしか聞いてもらえない。
DVを本気で立証する気があるのなら客観的な証拠を残しておくことが重要である。当然女性が加害者のDVもあるわけで、男性側も証拠作りをおろそかにしてはならない。
なお、DVのでっち上げのために虚偽の証拠作りをして裁判で慰謝料などを請求した場合、訴訟詐欺として詐欺罪に問われる可能性もあるのでくれぐれもしないように。