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法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

国に見捨てられた少年、それを自腹で支える弁護士

弁護士の仕事の中に付添人という仕事がある。犯罪の嫌疑がかけられた未成年の少年は、逮捕・勾留といった流れまでは、大人と同様に処理されていく。しかし、大人であれば、刑事裁判にかけられたり不起訴になるといった段階で手続が分かれ、少年は事件を家庭裁判所に送致されることになる。

家庭裁判所に送致された後は、少年たちはいわゆる鑑別所に身柄を拘束されるか、あるいは在宅事件として身柄はとられないまま、少年審判という手続を待つことになる。少年審判では、少年が本当にその犯罪を行ったかという事実認定と、少年のその後の処分が決められる。少年の場合は、大人のように刑事処罰が下されるのではなく、原則として、少年院送致や保護観察といった保護処分が下される。

この、家庭裁判所送致から少年審判までの間に少年の弁護をするのが付添人である。付添人の仕事は多岐にわたる。そもそも少年が冤罪ということもありうるので、やっていない犯罪事実を認定されないような弁護活動が大人の刑事裁判同様必要となる。罪を認めている少年に対しては、なぜそのようなことをやってしまったのか一緒に振り返ったり、反省を促すのも付添人の仕事である。次に、少年が社会復帰できるように、学校との調整や職場の確保、保護者との関係の調整、生活場所の確保などの活動をするのも付添人の仕事となる。また、被害者に対する示談・被害弁償活動も付添人の重要な仕事だ。

この付添人であるが、国選弁護人と同様、一定の罪以上の犯罪には国が付添人を選任してくれる国選付添人制度というものがある。国選付添人選任までの通常の流れとしては、家裁送致前の逮捕・勾留段階から少年についていた被疑者国選弁護人が、少年の家裁送致時に、裁判所に対して自分を国選付添人に選任するよう要望して、裁判所がその弁護人を国選付添人に選任する。

しかし、この国選付添人制度について、今大きな問題が生じている。国選付添人の選任要請があっても、家庭裁判所が少年に国選付添人を選任することを拒否する事態が多発しているのだ。法律上、国選付添人を選任するかどうかは、一定の事件を除いて裁判所が裁量的に決めることができる。つまり、裁判所は、少年に付添人が必要ないと思ったら国選付添人を選任しなくてもよいのである。

では、裁判所が国選付添人の選任を拒む場合というのは、裁判所が本当に少年に付添人を付ける必要がないと考えているのか。どうやらそうでもないらしい。なんと、裁判所は国選付添人の選任を拒む一方で、家裁送致前から付いている国選弁護人に対して、私選で付添人に付くよう期待してくるようである。そのような報告は弁護士のツイッターなどでもあげられているようだ。

弁護士が、私選で少年の付添人になるパターンとしては、少年または保護者から費用をもらって私選付添人になる方法と、弁護士会の援助制度を使って私選付添人になるパターンがある。弁護士会の援助制度とは、お金がない少年については、弁護士会が付添人費用を肩代わりしてくれ、少年には金銭的負担を求めないというものだ。援助制度を利用して付添人になった弁護士には、10万円程度が支払われるが、この財源は弁護士が毎月弁護士会に支払う会費があてられている。つまり、弁護士の自腹である。少年審判に付されるような少年やその保護者が、付添人費用(だいたい40万円程度)を負担できることはまずないので、国選選任を拒否された場合に少年に付添人を付けるには援助制度を使うことになる。

裁判所は、自分たちが国選付添人の選任を拒否しておきながら、一方で弁護士に対して自腹で付添人に就任するよう期待してきており、全く無茶苦茶な話である。裁判所が、国選付添人の選任を拒む要因は不明だが、おそらく予算の問題などがあるのかもしれない。

現状、多くの弁護士は、裁判所から国選付添人の選任を拒まれても、援助制度を使うなどして付添人に就任していると思われる。家裁送致前から関わってきた少年に対し、「裁判所が国選の選任を拒んだから今日でお別れだな。」とビジネスライクに突き放すことのできる弁護士はまだ多くない。

しかし、弁護士不況が叫ばれているなか、今後もただでさえ労力がかかり正規の私選報酬をもらってもあまりペイしない付添人活動を弁護士達が自腹でできる保障はない。また、裁判所が少年に国選をつけないというのは、国が少年を見捨てたも同然である。そんな見捨てられた少年に都合よく更生だけを期待するのは酷だろう。家裁にくるような少年はただでさえ、親からも学校からも見捨てられていることが多いのに、この上、国や弁護士からも見捨てられて更生などできるはずがない。裁判所が対象事件であるにもかかわらず国選付添人を付けないという運用は早期に改善すべきだろう。付添人がつかなければ被害弁償などもままならず、困るのは決して付添人を付けてもらえない少年だけではない。