法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

訴訟で600億円とも認定されていた中村修二氏の職務発明の対価-ノーベル賞

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青色LED(発光ダイオード)の中村修二氏がノーベル物理学賞を受賞されたそうです。

ノーベル物理学賞に赤崎勇・天野浩・中村修二の3氏:朝日新聞デジタル

青色発光ダイオードといえば当時夢の実用技術といわれており、20世紀中の開発は無理と言われていました。この世紀の発明の青色発光ダイオードですが、当時さらに話題を集めたのが中村氏が勤務先だった日亜化学工業に対して特許の共有持分の移転登録と職務発明の相当対価を請求した訴訟事件でした。

中村氏は、日亜化学在職中に青色発光ダイオードの製造の一部にかかる発明をしましたが、その対価は2万円しか払われていませんでした。そのため、中村氏は主位的に特許の持ち分の移転登録の請求を、それが認められなかったときに備えて予備的に特許法の職務発明の相当対価として200億円の支払いを求める訴訟を提起しました。

この訴訟の代理人は升永英俊弁護士。現在は一票の格差問題に尽力されており、カラフルな書面を作成するということでも有名な敏腕弁護士です。最近では、一票の格差訴訟のカラフルな上告理由書を全国の弁護士に私費で送りつけたことでも話題になっていました。このとき升永弁護士の右腕だったのが荒井裕樹弁護士。情熱大陸にも出演していたので知っている方も多いのではないでしょうか。現在、荒井弁護士は投資顧問会社を経営されているそうです。

一審の東京地裁は、特許の持ち分の移転登録は認めませんでしたが、予備的請求の職務発明の相当対価の額は約604億円と認定しました。原告である中村氏の請求金額が200億円だったので、請求金額満額の200億円の請求が認められることになりました。もし、600億円で請求していたら600億円の認容判決になったことになります。このいちサラリーマンに認められた巨額の認容判決は、当時マスコミでも業界でも非常に注目を浴びていました。

結局控訴審である高裁の和解勧告により、職務発明の対価約6億円と遅延損害金約2億円を日亜化学が中村氏に支払う内容の和解による解決となりました。一審では中村氏の発明における貢献度が5割と非常に高く認定されていたのに対して、高裁の和解勧告書は5%と低く認定するなどしていたことが一審の認定額から大幅減額された要因だったようです。それでも8億円なんだからすごいですよね。

もし中村氏が訴訟をせずに泣き寝入りしていたら会社からは2万円ですませられるとこだったかもしれないことを考えるとなんだか驚愕です。そんなごたごたもありましたが、今回見事にノーベル賞を受賞されて本当におめでたいです。また、基礎技術の大部分の研究に携わられた赤崎勇氏、天野浩氏も素晴らしいですね。