アニメなどの動画を権利者の許諾なく動画サイトにアップロードすることが著作権法違反になり、罰則もあることは周知されていると思います。
では、違法動画がアップロードされているページへのリンク集を作成することは著作権法上問題ないのでしょうか。先日、違法アップロードされたアニメ動画への某リンク集ブログのPVをsimilarweb.comで調べてみたところ、月間1500万PVを超えていました。そのブログには広告も貼ってありました。仮に1PVあたり0.1円ぐらいの価値があると仮定したら、月商150万円となかなかのビジネスとなっているようです。
違法動画アップロードで著作権法上問題となるのは公衆送信権の侵害になると思いますが、リンクを貼ること自体で公衆送信をしているとはいえないと考えられます。そのため、リンクの作成をもって直ちに著作権法違反というのは困難といわざるをえません。
もっとも、違法アップ動画へのリンク集の作成には次の問題点があります。
- リンク集の作成者は通常リンク先の動画が違法動画であることを認識していること
- リンク集の存在は、著作権が侵害された動画へのアクセスを容易にし、自動公衆送信を増加させて著作権侵害を助長させること
こういった問題点がありながら、何のお咎めもなしというのは通常の感覚からすると変だなということになると思います。
この点について、児童ポルノ法の事例で最近注目すべき最高裁判例が出ました。最判平成24年7月9日は、児童ポルノにアクセスするためのURL(URLの一部をカタカナにするなど改変はしていた)をウェブサイト上で紹介した行為を児童ポルノ法の「公然と陳列した」行為と認定しました。URLの紹介をするだけで公然陳列の正犯となるわけです。
とはいえ、児童ポルノ法の公然陳列と著作権法上の公衆送信は異なる概念なので、この判例を著作権侵害動画へのURLを紹介する行為にあてはめるのは困難だと思います。特に正犯とするのは難しいでしょう。
もっとも、当該判例には大橋正春裁判官の反対意見が付されており、反対意見ではURLを紹介する行為は公然陳列にはあたらないがほう助が成立する余地があるとされています。
とすると、著作権侵害動画へのリンク集を作成する行為は、著作権法違反の正犯とならないにしても、ほう助犯になる可能性が十分あります。ほう助犯は、犯罪の実行行為そのものをしなくても、正犯が存在し、正犯者の実行行為を物理的・心理的に容易にさせれば成立するからです。
リンク集が立件されるかどうかは、当局の気分次第な気がしますが、仮に立件された場合、ほう助犯の成立までを否定して完全無罪にもちこむのは個人的には難しいような気がします。
そうすると、当局がつぶそうと思えばつぶせないことはないリンク集はかなりリスクの高いコンテンツといえるでしょう。また、刑事上の責任だけでなく、権利者からの損害賠償請求のリスクも十分考えられると思います。
訴求性の高い著作権侵害動画へのリンク集は容易にアクセスを集められるコンテンツなのかもしれませんが、そのリスクの高さを考えれば手を出すべきコンテンツではないと思います。