法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

民法の勉強法

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昔から、民法を制する者は司法試験を制するなどと言われるように、民法は基礎的な法律であり、法律に携わる者であれば必須の分野である。

もし、仕事で法律に関わることがあり、空いた時間に法律を勉強したいという人は、まずは民法から基礎固めをすべきである。

僕は、学生時代から民法の学習には、かなり時間を割いており比較的得意な科目であった。民法の学習で得た素養は、実務に入ってからも役に立っている。

そこで、民法の勉強法について少し語ってみようと思う。ちょっと民法を勉強してみたいという軽いものでなく、しっかりと民法の基礎を学びたい人向けだ。

効率よく民法の基礎を抑える要点は、

  1. 全体像を把握する
  2. 条文の要件・効果を理解する
  3. 事例を学習する

の3点だ。

1.全体像を把握するするために読むべき入門本

これはどの法律を学ぶ際にもいえることだが、まずはその法律の全体像を把握することが重要である。特に民法は全部で1044条の条文からなり、その分量が膨大である。全体像を理解しないまま、個別の勉強に入っていっても自分が今何を勉強しているかわからない状態になったり、挫折することが目に見えている。

全体像を理解するには、まずは薄い入門本で勉強するのが有効だ。薄い本を何回も繰り返し読んで、ざっと民法の構造を頭に入れてしまおう。入門本としておすすめなのはこの1冊だ。

この本は、民法の全範囲をコンパクトにまとめてくれている。基本的に通説・判例で書かれており、著者のクセなどもほとんどないので、全体像を通説・判例から理解するにはピッタリの1冊だ。まずは、これを繰り返し読んでほしい。

ちなみに著者の潮見佳男教授は、司法試験の考査委員を務めていたこともあり、旧司法試験の口述試験では、突込みが大変厳しく恐れられていた考査委員の一人である。

2.事例を解く際の思考過程

民法は、条文を抽象的に理解しただけでは全く使い物にならないし、司法試験の論文問題なども解けない。あくまで民法は具体的な事例を解決するための道具に過ぎない。そのため、民法を使いこなせるようになるには、具体的な事例を学習することが必須である。

実際の具体的事例や司法試験の問題を検討する場合、その思考過程は極めて単純である。民法の思考過程は、次の1パターンだ。

① 具体的な請求を考える

② ①の根拠となる権利を検討する

③ ②で出した権利が認められるための要件を検討する

この①、②、③の思考過程は癖になるまで繰り返す必要がある。この思考過程さえ身に付けば解けない問題はないといっていい。以下個別にみておこう。

① 具体的な請求を考える

これは生の主張などと呼ばれることがある。具体的には、「金をよこせ」「土地を引き渡せ」「建物を修理しろ」などといった当事者が相手に求めることである。訴状の請求の趣旨に該当する部分である。

② ①の根拠となる権利を考える

請求の内容が決まったら、次にそれを実現するための権利を考える。「金をよこせ」だったら、その根拠が、不法行為に基づく損害賠償請求権なのか、売買契約に基づく代金支払請求権なのかいったことを検討する。これは法律用語では訴訟物と呼ばれるものである。

③ ②で出した権利が認められるための要件を検討する

訴訟物が決まったら、あとはその権利が認められるための要件を検討するだけだ。売買契約に基づく代金支払い請求権の場合は、要件は売買契約の締結となる。そのため、売買契約の締結が認められるかを事例から検討していくことになる。いわゆる論点といったものは、この要件の検討の際に出てくる。要件は法律の条文に書いてあるので、必ず条文から考えなければならない。売買契約であれば、民法555条だ。

この①、②、③の思考過程を息を吐くようにできるようになれば、民法の習得は一気に早まるだろう。

3.入門本の次に読む基本書

民法を学ぶ上で、具体的な事例を学ぶことが重要であることは前述のとおりである。そのため、入門本の次に読む本としてはできるだけ事例が豊富なものがよい。そこでお勧めなのが内田貴教授の民法Ⅰ~Ⅳだ。

この基本書は、事例が豊富に紹介されており、しかも事例は判例をコンパクトにまとめたものとなっているので、判例ベースで事例を学べる教材となっている。記述も初学者向けに書かれているので比較的わかりやすい方だ。独自説があたかも通説のように書かれているなどとの批判もあるが、それを踏まえてもこの本がお勧めである。

京大系の佐久間教授や山本教授、潮見教授の基本書も理論的で民法の理解に有用だが、1シリーズでそろえるなら内田民法に軍配があがると僕は考える。京大系の基本書は、別に買っておいて内田民法だけでは理解しにくいところなどを参照したりして補助的に使うのがよいと思う。別に1冊に絞る必要はないのだから、ベースとなる本を決めておいて、あとは好きに読むのがいい。むしろ1冊で済まそうというのが無茶な考えである。

ちなみに内田教授は先に控える民法改正(債権法改正)にも携わっている。

4.とにかく実践あるのみ

民法を使いこなせるようになるには、とにかく実践だ。司法試験などの資格受験生であれば、論文の問題を解くことだ。この実践については、勉強を開始した直後から始めた方がよい。まずは基本書を読んで理解してからと思う人もいるかもしれないが、基本書を読んだだけで民法を理解することはまずできない。民法を理解するには、具体的な事例にあたって、基本書などを参照しながら自分の頭で考える必要がある。

事例を解かずに基本書を読むだけの勉強は、野球で言えば素振りだけを延々とするようなものだ。実際にボールを打ったり、試合に出なければ上達しないのと一緒だ。

以上、民法の学習法を書いてきたが、民法の基礎を身に付けるのはそう簡単ではない。本気で学ぶのであれば少なくとも1000時間程度の時間をみつもって集中的に学習に臨む必要があるだろう。