法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

弁護士業務と電話秘書サービス

弁護士増員の影響もあってか、フルタイムの事務員を雇わない法律事務所が増えているようだ。売上規模や業務内容によっては、フルタイムで事務員を雇う必然性はないので、事務員がいない法律事務所があっても格別不思議ではない。

事務員がいない場合、もっとも困るのは留守中の電話応対であろう。顧客には携帯電話やメールアドレスを教えておけばよいだろうが、裁判所や交渉相手などは事務所の固定電話にかけてくるので、留守中の電話は不都合である。特に裁判所は留守電を残さない傾向にあるようだ。

東京地裁書記官に訊く(上)PDFファイル

対応策として、NTTの転送サービスを使うことも考えられるが、外出中は電話に出られないことも多いだろう。

そこで、電話秘書サービスの利用が一つの対応策として考えられる。電話秘書サービスは、事務所にかかってきた電話をコールセンターに転送して、オペレーターが代わりに電話に出て用件などを聴取し、メールなどで報告してくれるサービスだ。簡単な応対までやってくれるサービスもあるらしい。なかには士業専門の電話秘書サービスまである。実際に、電話秘書サービスを使っている法律事務所はそこそこあるとのことだ。

しかし、この電話秘書サービスであるが、関係者からの評判はあまりよくないらしい。というのも、法律事務所にかかってくるような電話は、継続的な関係を持っているところが多かったり、会話に難解な用語が飛び交うので、意思疎通がうまくいかないようだ。

例えば、裁判所がある事件について電話連絡をしてくるときは次のような感じになる。

「○○地方裁判所民事□部の△△です。××先生ご担当の事件番号平成27年(ワ)111号の件で、、、」

法律事務所の内部の者であれば、○○地方裁判所民事□部に係属している事件は当然把握しているため、どの事件について電話がかかってきたかがすぐにわかる。弁護士が複数いて事務員が全ての事件を把握していない場合でも、裁判所の電話の流れは把握しているので、すぐに事件番号などのメモをとれる体制ができている。裁判所もそういう前提で話しているだろう。

しかし、この流れをわかっていない人は、早口で事件番号を言われてもなかなか正確にメモがとれないと思われる。この「平成27年(ワ)」の(ワ)にもひらがなとカタカナの区別があり、その辺をわかっていない者が電話に出てもまともにメモを取ることは難しい。

法律事務所にかかってくるような電話は、一見さんはほとんどなく、継続的にやり取りをしている相手がほとんどなので、会話を省略することも多い。毎回毎回、新人事務員にでもかけているかのような対応をされては、かける方もイラついてしまうかもしれない。

また、裁判所などから伝えられる事項には一般用語ではないものが多数混じっている。

例えば、裁判所から「ウケショを送ってくれ」と言われても、「ウケショ」の漢字すらわからないオペレーターがほとんどであろう。逐一漢字を確認させられたら、裁判所職員もやってられないだろう。

さらに、顧客の立場からすると、秘匿性の高い事項の連絡に、外部機関である電話代行会社を介在させられることに対する不安もあると思われる。

このように、弁護士業務にはあまり電話秘書サービスはなじみにくいといえそうである。