法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

私道に植木鉢を置いた70代の夫婦が往来妨害罪で逮捕

往来妨害罪というあまり聞きなれない犯罪の嫌疑で堺市の70代の夫婦が逮捕されてしまったようです。

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報道によると夫婦は自宅前の私道に植木鉢などを置いて歩行者の通行を妨げたとのこと。夫婦は「私の土地に置いたので容疑は適用されない」「夫の土地なので関係ない」と弁解しているようです。

この往来妨害罪という罪は、いったいどのような罪なのでしょうか。まずは条文を確認してみましょう。

刑法124条1項

陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

 往来妨害罪の成立要件は

  1. 陸路、水路又は橋を
  2. 損壊又は閉塞して
  3. 往来の妨害を生じさせた

の3点です。

今回は道路を植木鉢で埋めて通行不可能にしているので、「陸路」を「閉塞して」「往来の妨害を生じさせた」こととして逮捕がなされたのでしょう。

しかし、この夫婦が弁解するように私有地である「私道」をふさぐことが問題になるのでしょうか。

この問題に関しては「私道」の種類をはっきりさせておかなければなりません。

「私道」とはその文字通り、私的に所有し利用する道路です。自動車学校やサーキットの道路なんかはまさに私道という感じですね。これを塞ごうが何しようが自由です。では、なぜ今回の夫婦は逮捕されてしまったのでしょうか。

私道の中には建築基準法上の道路とされているものがあります。建築基準法上、建物を建築するには一定の道路に接していなければなりません。そのため、建築基準法上の要件(いわゆる接道要件)をみたすために、私道を同法の道路として行政が指定することがあります。

建築基準法上の道路になってしまえば、たとえ私道であってもみんなが使える道路になってしまい、各種の制限がかかることになります。サーキットの道路みたいに自由に壊したり、塞いだりなどはできなくなります。

今回の私道はおそらく建築基準法上の道路であったため、往来妨害罪の適用を認めたのでしょう。

それにしても往来妨害罪は懲役2年以下の法定刑の軽い犯罪ですが、これで実名報道になってしまうのですね。骨折などを伴う傷害罪(法定刑15年以下の懲役)でもめったに実名報道はされないことを考えるとアンバランスじゃないですかね。