法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

写真に著作権はあります

ツイッターで写真に著作権がないというまとめが話題になっているようです。

写真に著作権はないと言う話 - Togetterまとめ

書いている人は法律の専門家でもなんでもないようですから、ほかっといてもいいのかもしれませんが、これをまともに信じて著作権侵害者が大量に出てしまうのもなんなので写真の著作権について書いておきます。

写真に著作権はあります!(STAP細胞はあります!風に)

著作権というのは著作権法という法律で定められた権利です。著作権の対象となるものを著作物と言い、著作権法では著作物について次の9つの例が挙げられています。

著作権法第10条

この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

1 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物 

2 音楽の著作物

3 舞踊又は無言劇の著作物

4 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物

5 建築の著作物

6 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

7 映画の著作物

8 写真の著作物

9 プログラムの著作物

写真も例示の中にちゃんと入っていますね。もっとも、これはあくまで例示ですので、この9つに該当しなければ著作物ではないということではありません。逆に、この9つのどれかに該当したからといって必ずしも著作物になるとは限りません。

ですので、「必ずしも写真が著作物になるわけではない」という意味ではツイッターの意見も正しいです。

では、どういう場合に写真の著作物性が認められるのでしょうか。

著作権法は著作物性について定義規定を置いています。

著作権法第2条1項1号

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

 条文を読む限り著作物となるには以下の4つの要素をみたさなければなりません。

①思想又は感情を

②創作的に

③表現したもので

④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する

なんだか小難しいですが、一般の方は、ほとんどの写真が著作物になって、著作物にならない写真はあくまで例外と思っておくのがよいでしょう。なぜなら、写真というものは、撮影者の意図によって構図が決められ、シャッターチャンスをとらえてなされるものですから、創作性があり、著作物性があると認められるのが普通だからです。実際に、ホームページに掲載された商品の平凡な広告写真ですら裁判例は著作物性を肯定しています(知財高判平成18年3月29日)。

写真自体に著作権がない写真というのは、例えば絵画などを忠実に複製するために撮影した写真や(撮影された絵画自体の著作権は別論)、固定防犯カメラの写真、自動証明写真機(スピード写真機)の写真、人工衛星が撮影した写真などの創作性が入る余地のないような写真です。

ツイッターでは風景を撮影した写真は著作物ではないとされていますが、防犯カメラのようなもので固定的に撮影しているものは別として、普通は撮影者は構図等を決めて撮影するでしょうから、風景写真も著作物にあたると考えるべきでしょう。

そのため、例え風景写真であっても、他人の撮影した写真を引用要件もみたさずにパクってつかえば著作権侵害になります。

風景写真であっても、ある人が撮った風景写真と同じような構図であらたに自分で撮影した写真を使うことが著作権侵害にならないことはたしかにあります。しかし、他人が撮った風景写真自体を使うことは、モロ著作権侵害です。風景写真に著作権はないというツイッターの下りはおそらくこのあたりの知識を混同してしまっているのでしょう。

専門知識というのは中途半端に知っている人の知識というのが最も危険です。そういう人は、知識がないゆえに断定的に自信をもって結論を言う傾向がありますので、全くの素人はついついそれが正しいと勘違いしてしまいます。

東大法学部でとある法律の講義を受けていたとしても、せいぜい15~30コマ程度の講義を受けた程度でその法律の専門知識を習得することなどできません。ましてや他学部の学生が、カリキュラム上おまけでついているような法律の講義を受けた経験など、何も勉強していないのとほとんど同義です。司法試験合格者とただの東大法学部生との間ですら、勉強時間に雲泥の差があるのです。さらに、ただの司法試験合格者と実務家弁護士との間にも雲泥の知識差があります。

専門知識はきちんと専門家に尋ねましょう。