法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

これから結婚する人のための婚姻費用入門-第2回

第2回「婚姻費用は真面目なサラリーマンほど損をする」

目次

1.婚姻費用はサラリーマン・公務員からが最も取りやすい

2.真面目な人ほど怖い給与の差押え

 1.婚姻費用はサラリーマン・公務員からが最も取りやすい

婚姻費用を算定するには夫婦それぞれの総収入を算定しないといけません。この際、サラリーマンや公務員の総収入の判断資料には源泉徴収票が利用されます。源泉徴収票をみれば、一目でその年の総収入がわかるので、サラリーマンや公務員の総収入を把握するのは非常に簡単です。通常サラリーマンや公務員は副業をしていませんので、源泉徴収票に書かれているのがすべての収入になります。また、夫の勤務先を知らないという妻はまずいないでしょう。サラリーマンや公務員の夫の収入を把握するのはとても容易なことです。

逆に妻のパート収入なんかはなかなか把握が困難です。夫が妻のパート先を把握していないということはしばしばあります。パートの場合、申告もしていないでしょうから課税証明書での収入の補足も困難です。仮に、苦労してパート先を特定しても、すぐに辞められてしまうこともあります。

自営業者の場合は、会社経営、個人事業主いずれの場合も、ある程度自分の所得をコントロールできます。そのため実際よりも所得が少なく出る場合があります。そうすると、婚姻費用が実態に比べ低くなってしまいます。この場合、妻側は、実際の夫の収入を立証することで、収入の算定を申告書に記載されている所得よりも上げることは可能ですが、そのような立証は困難なことも多いです。

サラリーマンというのは国家からも妻からも収入が把握されやすいわけですね。昔から9・6・4とかと10・5・3・1とか言われているとおりです。

以上のように、サラリーマン・公務員は、婚姻費用を取る側からみれば最も楽な相手といえます。

2.真面目な人ほど怖い給与の差押え

調停や審判で確定した婚姻費用について、任意の支払いがなされなければ、権利者は強制執行をすることができます。

なかなかきっちり払うという人ばかりではないので、婚姻費用が払われない場合は給料などを差し押さえたりします。しかし、いい加減な相手だと給料を差し押さえたとたん会社を辞めたりすることも多いです。こういった連中から婚姻費用を回収するのは至難の業です。妻としては、回収不可能な婚姻費用にこだわるよりは、さっさと離婚した方がよいことになります。

これが大企業に勤めていたり、公務員などの真面目な労働者はそうはいきません。こういう属性の人たちは、辞めたところでよりよい職に就けることはほとんどないので、まず会社を辞めたりはしません。

給料がいったん差し押さえられると、給与支払いの事務手続が煩雑になるため会社に迷惑をかけてしまいます。そのため、真面目な労働者は、給料の差押えを避けるため婚姻費用の未払いをすることは少ないです。そのため、妻としては別居だけでなく早期に法律上も離婚したい事情がない限りは、婚姻費用をもらい続けるのが得ということになります。

婚姻費用の場合、給料の差押えは手取り2分の1まで可能です。借金などを理由とする給料の差押えが手取りの4分の1までなのに対し、婚姻費用の差押えは、差し押さえられる側にとってかなり強烈なものとなっています。

次回予告:第3回「住宅ローンは自分名義で組むな、組んだら家から絶対出るな」

*婚姻費用に関するご質問はコメント欄にどうぞ