弁護士などの専門職の宣伝文句に「敷居の低い○○」といったものがあります。
敷居を低くみせることで顧客の間口を広げる営業戦略なのでしょう。敷居が高いと敬遠している顧客を獲得する上では一定の効果があると思われる戦略です。
しかし、僕は専門職が敷居を下げる戦略をとることは推奨しません。理由は以下のとおりです。
1.敷居を下げるとは厄介な客も受け入れるということ
2.専門職が儲けるには時給を上げるしかないこと
1.敷居を下げるとは厄介な客も受け入れるということ
低価格のファストフード店と高級レストラン、理不尽なクレームが多いのは圧倒的に前者です。激安衣料品店と高級ブティックでも同様でしょう。
過去にこんな事件もありましたね。
昨日もこんな事件が・・・
クレーム謝罪、土下座しても店員の頭蹴る…傷害容疑で男逮捕 滋賀県警 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
安宿と高級シティホテル、無連絡キャンセル比率や利用後の部屋が散らかり度合いが高いのは圧倒的に前者です。無料法律相談、有料法律相談でも、キャンセル率が高いのは無料の方です。
敷居を低くすればするほど、金払いが悪く、理不尽なクレームをつけてくるような客層を相手にすることになります。
こういった客を受け入れることは、大量生産・大量販売で広く薄く利益をとっていける業界では全体でカバーできるので問題ありませんが、大量生産・大量販売ができない専門職においては1人の異常なクレーマーがかなりのリスクになってしまいます。
2.専門職が儲けるには時給を上げるしかないこと
専門職の仕事は個別的・属人的業務がほとんどであり、ITや格安労働者などによるレバレッジを効かせることはほとんどできません。専門職の売り物は程度の違いこそあれど、あくまで自分の労働力です。
自分の労働力の提供可能時間には限度があるので、専門職が利益を上げるには、基本的には自分の時間あたりの売上を上げるしかありません。
そのため、専門職が儲けたいなら、金払いの良い優良顧客にコミットする必要があります。儲かるか否かは、金払いの良い優良顧客がリピーターになってくれるか、あるいは他の優良顧客を紹介してくれるかにかかっています。金払いの悪い顧客の相手をしている暇はないのです。
敷居を下げて顧客の間口を広げるということは、金払いの悪い顧客も相手にするということであり、それは優良顧客にコミットする時間を減らすことを意味します。これは、「儲ける」ということからは遠ざかる行為です。さらに、金払いの悪い顧客の満足度を上げることは、金払いの悪い顧客をリピーターにし、同種の顧客の紹介を招く行為であり負のスパイラルに陥ってしまいます。
以上のように、「儲ける」という観点からは専門職は敷居を下げるべきではないといえます。もっとも、専門職の中には儲けることに興味がない人も一定数います。そういう人はどんどん敷居を下げてくれればよいと思います。