法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

当番弁護士と国選弁護士の違い

警察に身柄を拘束されたら弁護士を呼ぼうなどとよく言われています。知り合いの弁護士を呼ぶ以外の方法では、当番弁護士を呼んだり、被疑者国選弁護士(正確には国選弁護人)を選任請求する方法があります。この当番弁護士と被疑者国選弁護士について、ネットやテレビの情報が錯綜しているので簡単にまとめてみます。

当番弁護士

当番弁護士は、逮捕などの身柄拘束を受けた人のために、弁護士会が1回だけ無料で弁護士を派遣する制度です。2回以上呼ぶこともできますが、建前上2回目以降は有料となっています。逮捕された人は、当番弁護士を呼ぶことで、弁護士から助言を受けたり、私選の弁護人を依頼したり(場合によっては被疑者援助制度を利用)、勾留後に国選弁護人へ就任することを依頼することができます。一定の資力(50万円以上預貯金)がある人は私選で弁護人をつけることが原則ですので、弁護士会に私選弁護人の紹介をしてもらうことになります。私選弁護人の紹介は当番弁護士とは別の制度ですが、実際上は当番弁護士が私選弁護人紹介を兼ねていることが多いです。当番弁護士が、私選での弁護人受任を拒否すれば、資力がある人でも国選弁護人を請求することができます。

当番弁護士の利点は、逮捕後勾留前にも弁護士を呼べること、被疑者国選対象事件以外の事件でも弁護士を呼べる点にあります。

いっとき、当番弁護士は税金でまかなっているとテレビで解説していた弁護士がいましたが、当番弁護士制度は弁護士会費でまかなわれており、完全に弁護士の手弁当です。

国選弁護士

被疑者国選制度は、法定刑が死刑又は無期もしくは長期3年を越える懲役もしくは禁錮に当たる事件について、勾留されている被疑者に国が弁護士を付けてくれる制度です。国選弁護人を付けるにはきちんと自分で選任請求をしなければなりません。ほっておけば勝手につけてもらえるわけではありませんので注意しましょう。

一定の資力がある人でも、いったん弁護士会に私選弁護士の紹介をしてもらい(事実上当番弁護士がこれを兼ねる)、受任を拒否してもらえば国選弁護人を選任請求できます。当番弁護士できた弁護士に国選についてもらうよう頼むこともできます(断られる場合もあり、その場合は別の弁護士が選任される。)

被疑者国選は、一定の法定刑以上の罪でないと使えません。たとえば器物損壊や単純賭博などでは被疑者国選弁護人をつけることはできません(もっとも、起訴されれば被告人国選弁護人が付きます)。この場合に弁護士を付けたいときは、当番弁護士を呼んで私選で依頼するか、お金がなければ被疑者援助制度という弁護士費用の立替制度を利用しなければなりません。

また、被疑者国選は、逮捕後3日以内に行われる勾留という逮捕に続く身柄拘束が始まってからしか付けることができません。そのため、逮捕後すぐに弁護士を呼んで、勾留という長期の身柄拘束を阻止する活動を弁護士にしてもらうには、当番弁護士を呼んで私選で依頼するか、知り合いの弁護士を呼ばなければなりません。

ちなみに国選弁護士費用は常に無料だと勘違いしている人もいますが、裁判で費用負担を命じられる場合もあります。