軽犯罪法という法律があります。文字通り軽い類型の犯罪を規定した法律です。軽犯罪法違反は全て拘留または科料という罪になります。拘留は1日以上30日未満の刑事施設への拘置、科料は1000円以上1万円未満の罰金みたいなものです。
軽犯罪法違反では、住居不定だったり出頭に応じないなどの事情がない限り、基本的に逮捕などの身柄拘束をされることはありません。ただし、一たび立件されてしまうと、警察や検察へ出頭をしなければならなかったり、前科・前歴が付いて経歴を汚してしまったりと厄介です。軽犯罪法違反は意外と職務質問などをきっかけに立件されてしまうので、万が一ということがないように軽犯罪法について軽く知識を入れておきましょう。
1.凶器携帯の罪
一番警戒しなければ凶器携帯の罪でしょう。セーフだと思っているのが意外とアウトだったりします。
軽犯罪法1条2号
正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
銃刀法の関係で刃物を持ち歩いてはいけないということがわかっている人は多いですが、刃物以外の知識についてはあいまいな人が多いと思われます。木刀などはもちろんのこと、もう少し小さいサイズの木の棒、野球のバット、催涙スプレーやスタンガンも本条違反の対象となります。もっとも、正当な理由があって持ち運んでいる場合は、処罰対象になりません。もっぱら防御に使うためだけの純粋な護身用という理由については正当な理由になり得ますが、裁判で認定してもらえるかは微妙なラインです。仮に裁判で「正当な理由」を証明できても、そもそも立件されること自体が負けという側面がありますので、よほど特殊な事情がない限り持ち運ばないにこしたことはありません。
本条は携帯を禁止するものですが、携帯とは車のトランクなどに入れていることなども含みます。職務質問なんかで車のトランクを調べられて、任意同行というパターンなどが多いでしょう。
2.侵入具携帯の罪
住居侵入などに使われるような器具を携帯していはいけないという罪です。
軽犯罪法1条3号
正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
条文に書いてあるものの他に、ドライバー、ペンチ、やすり、レンチ、ハンマー、スパナ、ニッパー、懐中電灯なども本条違反の対象になるので注意しましょう。
この犯罪で厄介なのは、正当な理由がなく携帯していれば犯罪が成立してしまい、実際に住居侵入などに器具を使う意図が犯罪成立の条件になっていない点です。
3.排せつ等の罪
いわゆる立ちションやつば吐きについて成立する罪です。
軽犯罪法1条26号
街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者
女性は大丈夫だと思いますが、男性ではチラホラみかけますね。実はつば吐きや立ちションは犯罪です。まあ立件にまでいたるのは珍しいとは思いますが。
立ちションが丸見えだった場合は、別途身体露出の罪も成立してしまうでしょう(軽犯罪法1条20号)。
軽犯罪法1条20号
公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者
4.おまけ
軽犯罪法違反で、比較的最近話題になったのは浮浪の罪ですね。ニュースを覚えている人も多いのではないでしょうか。
軽犯罪法1条4号
生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの
働けるのに働かずにウロウロしている人に成立する犯罪です。一時ニート罪など呼ばれたこともありましたが、住居がないことが成立条件ですので、単にニートであるだけではこの罪にはなりません。ニートの人は安心してください。
軽犯罪法違反は他にもいろいろありますので、暇なときにでも条文をみてみると面白いと思います。ここで紹介した罪以外では、火気乱用の罪(9号)、窃視の罪(23号)、汚廃物放棄の罪(27号)、田畑等侵入の罪(32号)などは条文を見ておいた方がよいと思います。もう少し正確な知識を得たい人は下の一冊を読んでみてもよいでしょう。
条文はこちら:軽犯罪法
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