法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

美濃加茂市長保釈へ、ところで保釈の意味わかってる?

贈収賄の容疑で身柄拘束中の美濃加茂市長について、23日に名古屋地裁が保釈を認める決定を出しました。保釈保証金は1千万円。PC遠隔操作事件のときの保釈金と同じ額ですね。

岐阜・美濃加茂市長、保釈へ 現金の授受、一貫して否認:朝日新聞デジタル

ところで、この「保釈」手続について正確に理解している人って実は少ないです。多くの人が結構誤解をしています。よくある誤解は以下のとおり。

  • 保釈金を払えば無罪放免になる
  • 保釈金は返ってこない
  • 金を払えば誰でも身柄を解放される
  • 逮捕されたらいつでも保釈請求できる等

以上はいずれも間違いです。ニュースを正確に理解できるよう保釈手続制度について簡単に確認していきましょう。

保釈請求ができるのは起訴後から

ある容疑がかけられると逮捕される場合があります。これが最初の身柄拘束です。逮捕がされると検察官は3日以内に引き続き身柄拘束を続けるか否か決定しなければなりません。逮捕に続くこの身柄拘束を勾留といいます。

検察官が身柄拘束はもう必要ないと考えたら、被疑者を釈放し、その後は在宅事件として処理されます。他方、引き続き身柄拘束をして捜査を続ける必要があると考えた場合は、裁判所に勾留の許可を求め、身柄事件として捜査を続けます。

裁判所が勾留を許可したら、原則として10日間さらに身柄拘束が続きます。場合によっては、そこからさらに最大15日間の延長がされます。

検察官は勾留期間の満期までに被疑者を釈放するか裁判にするか(起訴するか)を決めなければなりません。

被疑者が起訴されたら、今度は起訴後勾留という身柄拘束が続くことになります。

保釈請求ができるのはこの起訴後勾留からのみで、起訴前の身柄拘束に対して保釈請求をすることはできません。

保釈が認められるには条件がある

保釈というのは、あくまで裁判の日までの起訴後勾留から被告人を解放するという制度であって、保釈がされたからといって無罪放免になるわけではありません。保釈が認められた後に実刑判決が下されれば、再び被告人の身柄は拘束されて刑務所行きとなります。

保釈には権利保釈と裁量保釈というものがあり、認められるにはそれぞれ条件があります。かなりおおざっぱに言ってしまえば、被告人が、①証拠隠滅とかをしないと考えられる、②逃げて裁判に出頭しないということはなさそうな場合に保釈が認められます。そして、被告人が逃亡しないことを担保するために保釈金の納付が要求されます。被告人が容疑を認めていない場合は、証拠隠滅や逃亡のおそれが高いと考えられてしまうのでなかなか保釈が認められません。人質司法といわれる所以ですね。

保釈金は、逃亡したり証拠隠滅等をしなければ、例え有罪になっても被告人に返却されます。逆に逃亡したり、証拠隠滅をすれば没収されることがあります。遠隔操作事件では被告人が変なメールを送って証拠隠滅を図ろうとしたので1000万円の保釈金のうち600万円が没収されました。

まとめ

  • 保釈請求ができるのは起訴されてから
  • 保釈が認められるには証拠隠滅のおそれがない等の条件が必要
  • 保釈はあくまで裁判までの間の身体拘束を解放するもの
  • 保釈金は判決後に返ってくるが、逃亡や証拠隠滅をしたら没収される