法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

弁護士事務所の経費はどこまで下げられるのか

弁護士数の増加もあり規模のでかい法律事務所が増えてきた。一方で、ほんとにこじんまりとしたスモールサイズの事務所も増えてきたように思う。

そこで、弁護士一人事務員なしのスモールサイズの事務所を想定して、法律事務所の維持にかかる固定費は最低どれくらいかかるか検討してみた。検討にあたっては現実的でない極端な形態は避けることをこころがけた。

早期独立・即独を考えている弁護士や零細規模で起業しようとしている人にも参考になるだろう。

法律事務所を運営する上で支出せざるを得ない経費としては以下のものがあげられる。

1.家賃・光熱費

2.弁護士会

3.複合機のリース料

4.通信費

5.データベース利用料・リース料

6.書籍費

7.弁護士賠償保険

8.その他

以下個別にみていこう。

1.家賃・光熱費

自宅で開業する宅弁という形態もあるが、セキュリティや顧客からの信用の観点から現実的でない。できる限りオフィス用の賃貸物件を選択すべきである。

1人で開業するなら、事務所のスペースは10坪もあれば十分だろう。開業地域にもよるが、家賃と光熱費をあわせて月額10万円程度に収めることは十分可能だ。もっとも、10坪だと2人体制が限界だと思うので、すぐに弁護士・事務員3人体制にする予定があるなら15~20坪は欲しい。この場合、田舎やマンションなどを借りない限りは、家賃はもう少し上がってしまう。

2.弁護士会

家賃の次に高い経費は弁護士会費だ。所属弁護士会や弁護士登録年数にもよるが、月額5万円程度の支出が強いられる。

3.複合機のリース料

開業にあたって悩まされるのは、電話機や複合機をどうするかだ。

事務員なしの1人開業なら、とりあえずは高額なビジネスフォンは不要で家庭用の電話機でことたりるだろう。

問題は、複合機だ。複合機はヘビーユースするし、故障したら業務上致命的なので、保守もしっかりした業務用のものが必須だと思われる。正直家庭用のノロノロした複合機で業務を行うことは想像できない。複合機は、中古であれば安く購入できるが、保守や性能を考えると新品の方がよいだろう。

業務用のものであれば、80~100万円程度の安い機種で十分だ。通常はリースになると思うが、月額リース料は安くても15000円程度にはなる。また印刷する際にかかるカウンター料金の基本料として月最低1000円程度がかかる。カウンター料金は、最初はモノクロ1枚4円ぐらいで提案されるかもしれないが、最低でもモノクロ1枚2円、カラー1枚15円ぐらいまでは値切っておこう。

4.通信費

通信費として、固定電話料金、携帯電話料金、インターネット回線料金が不可欠の出費となる。

世間ではケータイ弁などという弁護士の存在も噂されているが、弁護士業務にはFAXが必要不可欠なので、固定電話を引かないことはありえない。電話用とFAX用の2回線が必要となる。

また、事務員をおかない場合、携帯電話は多機能なスマートフォンが必須だろう。

電話料金は変動するが、最低でも、

 固定電話  月額1万円

 携帯電話  月額7千円

 ネット回線 月額4千円

はかかるだろう。

5.データベース利用料・リース料

判例秘書やウエストロー、TKCなどのデータベースは、絶対に契約しなければならないものではないが、まっとうに弁護士業務を行いたいなら不可欠である。

最もメジャーな判例秘書はリース形態をとっているが、ID1つでフルパックで契約した場合のリース料は月額2万5000円程度になる(もっと値切れるかもしれない)。

最低でも、判例検索と判例タイムズくらいは契約に入れておきたい。その場合の費用の目安は各社月額1万円程度となる。

6.書籍費

弁護士にとって書籍への投資は必要不可欠である。開業したての頃は書籍のストックが少ないので、多額の費用がかかる。

書籍費は、最低でも月額3万円は用意したい。弁護士会の図書館を使うという手もあるが、営業時間が限られているし、めぼしの本があるとは限らない。また、移動の時間がもったいないし、一人事務所ではあまり事務所を空けられないだろう。書籍への投資を惜しむようならそもそも弁護士業をやらない方がいい。

7.弁護士賠償保険

弁護士賠償保険の加入は事実上必須だ。弁護士一人あたりの保険料は、月額5000円程度である。

8.その他

事務員を雇わないのであれば、必須ではないが電話秘書サービスの導入も検討にあがるだろう。その他、紙代や封筒代などの消耗品費が月額1万円程度はかかる。

9.まとめ

以上をまとめると、事務所の経費は月額24万2000円ほどになる。

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ここから、いろいろ節約しても最低月額20万円程度はかかることになる。

他にも個々の事件の処理にかかる費用や交通費、付き合いや研修などの参加費用等がかかるので、通常はさらに費用は増えるだろう。最初は勉強になるので自分で税務処理をしてもよいが、できれば税理士もつけておきたい。

事務員を雇うとなると経費は一気に倍額になる。最もかかる経費は人件費である。