法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

AV出演逮捕のうさん臭い報道

昨今のAV強要問題などの報道を受けてついに警察が動いたようである。大手AVプロダクション元社長らが逮捕されたいうニュースが各所を騒がせている。

大手AVプロダクション元社長ら逮捕 女性「出演強要された」 労働者派遣法違反容疑(1/2ページ) - 産経ニュース

今回の報道ではほとんどの見出しに「強要」というセンセーショナルな用語が使われている。

しかし、実際に逮捕された被疑事実は労働者派遣法違反である。労働者派遣法は、「公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的で労働者を派遣することを規制している。

労働者派遣法58条

公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をした者は、一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

この罪は、「公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的で労働者を派遣したことによる罪であり、出演が強要だったかどうかとは全く関係がない。仮に女優が望んでいたとしても、AV業務が「公衆道徳上有害な業務」にあたるのであれば成立しうる罪なのである。したがって、法律論的にいえば、強要の有無を報道のメインに据えるのは全くの筋違いということになる。

強要があったか否かを争点とするならば、検討すべき犯罪は強姦罪なり強制わいせつ罪になるのが筋であろう。

にもかかわらず、労働者派遣法違反で逮捕した上で、「強要」をことさらに強調するのは、パフォーマンス色の極めて強い活動に思えてならない。