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法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

傷害致死で執行猶予は軽いのか。

女社長が男性アルバイトを車内で複数回蹴り死亡させた事件で、女社長に懲役3年、執行猶予5年の判決が下された。

この判決に対しては、人を死なせたのに執行猶予は軽すぎる、男女が逆なら実刑だったなどと批判が殺到している。

バイト男性を蹴って死亡させた女社長に執行猶予判決 「刑軽すぎる」とネットで議論に : J-CASTニュース

ではこの量刑は本当に軽いのだろうか。

まず注意しなければならないのは、本件は殺人事件ではなく傷害致死事件ということだ。殺人というのは、「死んでもかまわない」と認識しながら暴行などを加え被害者を死亡させた場合で、傷害致死というのは「死なせるつもりまではなかった」場合である。

当然殺人事件の方が傷害事件より量刑は重く、殺人罪の法定刑は「死刑または無期、5年以上の懲役」となっており、原則として執行猶予はつけられない(執行猶予を付けることができるのは3年以下の有期懲役等)。無理心中や心神耗弱などの事件でときどき法律上の減刑がなされたうえで執行猶予がつくことがある程度である。

他方で、傷害致死罪の法定刑は、3年以上の20年以下の有期懲役である。懲役を3年にすることができるので殺人罪と異なり執行猶予を付けることにテクニカルな問題は生じない。そのため、執行猶予をつけるか否かは裁判所の量刑感覚によることになる。

では、過去のケースはどうなっているだろうか。

刑事裁判のデータとしては、法務省の発表する犯罪白書が有名である。しかし、犯罪白書では傷害罪と傷害致死罪がまとめられてしまっており、傷害致死罪プロパーの執行猶予率を読み取ることができない。

平成27年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/1

次に、第一東京弁護士会が発行している「量刑調査報告集4」によれば、傷害致死の事案は7件掲載されており、7件すべてが実刑になっている。

サンプル数が少ないのであまり参考にはならないかもしれないが、傷害致死で執行猶予というのは一般的ではないということはわかるだろう。

女社長事件の特徴としては、遺族との示談が済んでいたというものがある。

しかし、一般人の感覚からするとそれでも軽いという意見が強いと感じれられるだろう。