期限を守るということはビジネスで信頼関係を構築するために最も重要なことの一つである。しかし、毎回確実に期限を守ることができる人材というのは実に少ない。
我々日本人は小学生のときから宿題を期限内に出せといつもうるさく言われてきており、大方の児童がそれを守ることができていた。にもかかわらず、社会人になったとたん多くの人が期限を守ることができなくなる。
提出物の期限遵守に敏感な元・内申エリートたちが多い弁護士の世界でも期限を守れる者は少ない。裁判所から指定された書面の締切を毎回きちんと守る弁護士は体感で上位2割程度いるかいないかといったところである。
期限を守るということは、より広く言い換えれば約束を守るということである。ビジネスでは小さく簡単な仕事できちんと約束を守り信頼関係を積み上げていって、ようやく大きくて困難な仕事を任されるようになる。これは上司との関係でも、取引先との関係でも同じである。約束を守れない者は、いつまでたってもどうでもいい仕事しか割り振られず成長できず、最後は切られてしまう。約束を守れる者は、大きな仕事を貰えるようになり成長も早くなる。当然収入も上がるだろう。
では、期限を守れない人たちにはどういう特徴があるのだろうか。おおまかに分類すると、できない約束をするタイプ、優先順位が付けられないタイプ、着手自体が遅いタイプ、完璧主義なタイプ、そもそも病気であるタイプなどがある。
できない約束をするタイプ
期限を守れない人たちの中には、相手を喜ばせようとできない約束をしてしまう人がいる。1週間では到底できない仕事に対し、1週間でできると約束してきてしまうのである。当然、期限内に仕事は完成せず相手の期待を裏切ることになり、かえって信頼関係を失ってしまう。
人の感情というものは絶対的なものではなく相対的なものにすぎない。客観的にみれば1週間かかる同じ仕事であっても、3日中にできると言われていたのに1週間かかれば上司や客は激怒するし、2週間かかると言われていたのに1週間でできれば上司や客は大変満足する。
こういった人の心理を理解して、少なくとも悪い方には持っていかないことが重要である。
優先順位をつけられないタイプ
優先順位をつけられないのは学歴エリート層に多い特徴である。彼らは大学受験までは全ての勉強をこなしてしまってもなお時間が余るといった万能感を経験してしまっている。そのため、徹夜でもすれば間に合うといったおごりや楽観があり(実際、大学受験まではそれで何とかなってきたのだろう。)、期限がある仕事から優先的に手をつけるという発想が乏しい。
しかし、彼らの大半は学生時代のような徹夜をできるような体力はもはや残っておらず、仕事にかかる時間の見積能力も未熟なため、結局期限を守れないことになってしまう。
着手自体が遅いタイプ
最も多い特徴と思われるのは、端的に着手が遅いというものである。なかなか仕事に手を付けることができず、手を付けた頃には手遅れになっているというパターンだ。
なぜ着手が遅いかといったら、やる気がおきないという言い訳が多いが、彼らはやる気がどこかから突如湧いてくるものであると勘違いをしている。やる気というものは仕事に手をつけて初めて湧いてくるものである。そのため、いやいやながらも着手さえしてしまえばその仕事はほとんど終わったようなものである。
完璧主義に陥っているタイプ
完璧主義に陥っている者も納期が遅い。いつまでたっても仕事のけりをつけられない人たちだ。0から80点の仕事をするよりも、80点を100点に引き上げる仕事の方がはるかに困難で時間もかかる。しかし、彼らは100点の仕事を求めてしまい、時間だけがかかり、結局期限を守れなくなってしまうのである。
そもそも客や上司は100点の仕事なんか求めていない、2週間かけて100点の仕事をされるより、3日で80点の仕事を仕上げてもらえる方がよっぽどうれしい。また、80点の仕事を短期で回す方が、じっくり100点の仕事を完成させるより、よっぽど経験値も積めるだろう。
そもそも病気な人たち
期限を守れない人たちの中には、そもそもADHDであったり、うつ病などの疾患を抱えている人がいる。こういった人たちは医師などの専門家に相談をして、自分の症状や病状に向き合うしかないだろう。気の毒ではあるが、勤務先の上司はともかく取引先はこういった人たちに対してはドライかつシビアである。
結局自己評価が高く、責任感がない
以上、期限を守れない人の特徴を述べてきたが、病気の人を除き、結局は自己評価が高すぎるというところに問題が集約される。できない約束をしてしまうのも、優先順位が付けられないのも、着手が遅いのも、完璧主義なのも、全て自分の評価を高く見積もりすぎてしまっていることから起こるミスである。問題の本質に自分であればなんとかなるだろうというおごりがある。
また、結局仕事を軽くみすぎているという責任感の欠如がある。彼らも、受験の願書を出し忘れたり、就職面接に遅刻してくるなどということはなかったはずである。結局、期限を守らない仕事については、それらよりも軽いものだと考えているのであろう。
逆からみれば、期限を守るだけでも、ビジネスマンとしてはかなり上位の層にいけるのでビジネスの世界というものは割とちょろいものである。