法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

新生児出生時のDNA親子鑑定を義務付けるべき

元・光GENJIの大沢樹生氏がおこした、長男との間の親子関係不存在確認訴訟が話題となっている。

大沢氏は1996年、女優の喜多嶋舞氏といわゆるできちゃった結婚をし、翌1997年、長男が出生した。その後、2005年に2人は離婚、2008年、大沢氏は再婚し、2013年にDNA鑑定の結果大沢氏と長男との間に生物学的な親子関係がないことが発覚した。

大沢氏の親子関係不存在の主張に対し、元妻の喜多嶋氏次のように反論。

「大沢さんが記者会見で話しているのをテレビで見て、あまりにも悲しくて……。なぜ、事実でないことをあそこまで平然と言えるのかと。」「断言します。Aの父親は大沢さんです。ですから、大沢さんが言っているようなことはありえないと、あちらにもお話ししています。息子はいま、アメリカで心機一転頑張っているところなんです。独り立ちできるようになったころに、Aが望むなら再鑑定をすればいい。ただ、いまはそっとしておいてあげたい。もうこれ以上、息子の心を傷つけたくはありませんから……」

引用元:喜多嶋舞 DNA鑑定結果に反論「長男は大沢さんの子です」(芸能) - 女性自身[光文社女性週刊誌]

結局、大沢氏は、長男との間の親子関係不存在確認訴訟を提起し、2015年11月19日、東京家裁は大沢氏と長男との間に親子関係は存在しないことを確認する旨の判決を下した。この判決が確定すれば、名実ともに大沢氏と長男との親子関係はなくなる。

 一連の大沢氏の行動に対しては批判の声も一部存在する。

ニュースキャスターの安藤優子氏は次のように述べる。

「あんたは僕の子じゃないんだよって言われる息子の気持ちになると切なすぎません?」「厳密な法解釈と家族の形って違うじゃないですか。そんなに厳密に法的に『あなたと私は家族じゃない!』って言わなきゃいけないんですかね?」

引用元:安藤優子「切なすぎません?」大沢樹生の長男に同情 - 芸能 : 日刊スポーツ

しかし、大沢氏の一連の行動は至極当然なものと思える。妻が浮気して作った他人の子を自分の子と勘違いして育てさせられた男の苦しみは筆舌には尽くしがたい。これは経験をしていない者が想像をしただけでも耐えがたいものである。

たしかに、このようなケースでは子も被害者である。今まで父親と疑いもせずに慕っていた存在が突如、他人とわかったときの心境は悲惨なものであろう。しかも、単なる養子の場合と異なり、偽りの父親からは憎しみの対象とすらされうるのである。

もっとも、子に対するこの被害の加害者は100%元妻であって、偽りの父親に責任は一切ない。彼自身が一番の被害者なのだから。

このような悲劇が生まれるのは、出産の構造自体にある。女性の場合は、自分の胎内から子が生まれるわけだから、生まれた子は絶対に自分の子であるとわかる。他方で、父親にとっては、妻から生まれた子が自分の子であるかどうかは、DNA鑑定でもしない限りわからない。現状、任意でDNA鑑定を行っている親子はわずかしかいないだろう。DNA鑑定をするような頃は、既に夫婦間の紛争が生じてしまっている頃である。

もし、出産の段階で親子関係が明らかになっていれば、偽りの父親が他人の子を長年育てるという悲劇は避けることができる。今回の大沢氏のケースも、親子関係不存在が確認されるまでの間に18年かかっており、事実上の親子関係が相当長くなっている。それゆえに被害も甚大であり、とても巻き戻して清算ができるものではなくなってしまっている。入口の段階で、親子関係が不存在であることがわかっていれば、このような甚大な被害は生じなかった。

そのため、出産時にDNA親子鑑定が義務付けることが必要である。現状、母体の保護については規定が整備されているが、実は父性の保護に関しては法の整備が追い付いていない。本来、自分の子を育てる権利、他人の子を育てない権利というのは強く保護されなければならないものであり、実の父親であることを確認することは極めて重要なことのはずである。今回のケースでいえば、被害者は大沢氏や長男だけではない。実の父親も、自分の子を育てられなかったという被害を被っているのである。

今こそ、父性の保護について見直されるべきときであろう。