法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

銀座クラブママの枕営業判決で勘違いしてはいけないこと

クラブのママのいわゆる「枕営業」について、東京地裁が「売春と同様、商売として性交渉をしたに過ぎず、結婚生活の平和を害さない」と判断し、妻のクラブママに対する賠償請求を退ける判決があったことが話題になっている。

銀座のクラブママが夫に「枕営業」 妻の賠償請求を棄却:朝日新聞デジタル

この判決を受けて、巷では「風俗やキャバ嬢相手は不倫ではないと裁判所が認めた。」といった理解がなされていることがあるが、これは危険な理解である。

まずこの判決で注目しなければならないのは、妻の損害賠償請求の相手が夫ではなく、不倫相手のクラブママということだ。

日本では、不倫をした配偶者のみではなく、不倫相手への損害賠償請求も概ね認められている(不倫相手が、過失なく相手が結婚していたことを知らなかったような場合は別)。このような日本の裁判例の傾向については異論も多い。

というのも、配偶者はもう片方の配偶者との間で結婚という契約を結んでおり、不倫をしないという義務を負っている。不倫をすれば契約違反なわけであるから、損害賠償請求されて当然である。他方で、不倫相手自体は不倫をされた配偶者との間で何らの関係もない。そのような不倫相手が、誰とどういう関係を持とうが自由ではないか、不倫をした配偶者のみに不法行為責任を認めれば不倫をされた配偶者の救済としては十分ではないかという疑問が出てくるからだ。

そうすると、ある意味あくまでお仕事に過ぎないクラブママの行為が不法行為とはいえないという今回の判決もそれなりに理は通っている。

ただし、そのような場合でも契約違反の張本人である夫に対する損害賠償請求は十分に認められると思われるし、離婚事由の不貞行為にも該当することになろう。

相手がお仕事だからといって、配偶者自身が不倫の責任を免れることにはならないという点に注意をしておきたい。