法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

若年自営業者は実は縛られている

最近は自由な働き方だ、フリーランスだ、自営業だと、若者の会社離れが推奨されているような風潮がありますが、若年自営業者経験者の僕としてはよほど自信がある人以外にはあまりすすめられたものではありません。

というのも、自営業者は、サラリーマン時代の給料に対して、よっぽど稼がない限りは随分とお金に縛られた生活を送ることになります。

独立をして自営業になるといっても、すぐにお金が入ってくるとは限りません。そのため、独立をする前には、通常6か月分の生活費と6か月分の事業の運転資金を用意します。できれば1年分は欲しいところです。この計算によると、あまり経費のかからない事業を始めるとしても300~500万円は最低必要になります。これはあくまで生活費と運転資金なので、開業費等は別途かかります。20代前半から中盤の若者であれば、まずこの数百万を確保するので精一杯です。そして、この数百万円のお金はあくまで安全マージンなので手をつけることはできません。銀行に塩漬けするのみです。

他方で、サラリーマンは、クビにさえならなければ毎月決まった給料を得られます。仮にクビになってもしばらくは失業手当がもらえるので、すぐに食っていけなくなるということはありません。そのため、数百万円もの貯金をしておく必要はありません。若年サラリーマンは若年自営業者が塩漬けしているような数百万円を、リスクの高い金融商品に投資したり、自己投資したり、遊興に使ったり、結婚資金に使ったりすることができます。20代のときに、数百万円を自由に使えるか否かというのはかなり大きな違いになるでしょう。

また、自営業者は辞めるのも自由ではありません。ちょっと今の仕事は合わないなとか、思ったよりも稼げないなと感じても、取引関係をすぐに止めることはできません。勝手に止めたりなんかしたら損害賠償請求をされてしまいます。そのため、自営業者が事業を辞めようとするなら、徐々に取引を減らしていくか、他者に引き継ぎをしなくてはなりません。これに時間が結構かかります。

他方で、サラリーマンは2週間の予告期間さえおけば辞めるのは基本的に自由です。多少強引な辞め方をしたところで、損害賠償請求をされることなんてまずありません。仕事が合わなかったり、給料が安すぎれば転職してしまえばいいのです。そのコストは自営業者に比べはるかに小さいです。

もっとも、自営業をすれば、サラリーマン時代に比べてより稼げるチャンスを得ることができます。儲けることができれば、金銭的な縛りからは解放されますが、そうでない場合はサラリーマンよりも縛られた生活を送ることになります。