法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

要約コンテンツの誘惑に駆られたら速読本舗事件を思い出そう

ビジネス本の中で著者が伝えたい重要なことは、大概全体のページの5%くらいであり、残りはその重要な5%の理解を助けるためか、ページ数を稼ぐための飾りである。現代人は忙しいので、なかなかビジネス本を全部読む時間をとることはできない。そのため、本の重要な部分をまとめた要約には強い需要があると思われる。現に、高い評価がついている書評は本の要約を詳細に行っているものが多い。

ちなみに書籍の要約に対する需要をとらえて、こんな要約サービスを展開している会社もあるようだ。

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ブロガーとしては他人の著作物に乗っかって比較的楽に記事を作ることができ、アクセス数も見込める要約コンテンツは魅力的にうつるかもしれない。しかし、要約コンテンツには著作権法違反のリスクが多分に含まれていることに留意しなければならない。書籍の要約と著作権法の関係についての解説は別の機会に譲るとして、要約コンテンツの先行事例として速読本舗事件を紹介しておこう。

この事件は、速読本舗というウェブサイトを開設して、ビジネス書などの要約をサイト上で公開したりメールで有料会員に送信したりしていた会社が、書籍の著作者から著作権(翻案権、複製権、公衆送信権等)及び著作者人格権の侵害を理由に損害賠償請求や要約の削除などを求められた事例である。裁判では被告会社が欠席しており、原告ら著作者が勝訴している。

書籍の要約は、その書籍を買わなくていいレベルまで詳細なものだったり、要約自体が著者の意図と異なるような不適切なものだと著作者の反感も買いやすい。そのため、要約コンテンツは著作権リスクを高く有するコンテンツといえるだろう。

ちなみに上記で紹介した要約サービスはあらかじめ権利者から承諾を得ることで著作権問題をクリアしているが、個々のブロガーがあらかじめ権利者に承諾を得ることは現実的には困難であろう。

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