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法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

ブラック企業も多いけどモンスター社員はもっと多いよ

最近ブラック企業叩きが流行っている。ブラック企業は労基法などの法律を守りきれていないところもあるので、叩きやすいというのもあるだろう。また、多くの人が会社に不満をもっているというのもあると思われる。

たしかに、従業員を人として扱わないようなブラック企業は叩かれてもしかたないし、淘汰されるべきである。他方で、企業ばかり叩かれるのはみていて大変気の毒に思う。というのも、僕の知る限りブラック企業よりもモンスター社員の方がはるかに多いからだ。

モンスター社員とは適当な造語であるが、ブラック企業の対義語のようにとらえておいてくれればいいだろう。企業は常にこのモンスター社員に悩まされている。ブラック企業は辞めればいいが、モンスター社員は辞めさればすむという話ではないという問題もある。

そもそも企業が人を雇うのはその人を使って利益を出すためである。決してその人の生活を保障するためではない。とすれば、企業に利益をもたらさない労働者は本来企業にとって不要なはずである。企業に利益をもたらさない労働者というのにはいろいろ類型がある。売上があげられなかったり遅刻・欠勤を繰り返すなどの成績不良型から、人間関係のトラブルを起こし職場の士気に悪影響を与える迷惑型、体調不良で会社に来られない休職型、究極的には会社の情報やお金を盗む泥棒型まで様々だ。

しかし、企業に利益をもたらさないからといって、企業はすぐにその労働者をクビにすることはできない。日本の労働法規は世界的に見ても高いレベルで労働者の解雇規制をしいているからだ。上記類型の中で比較的すんなりクビにできるのは、せいぜい泥棒型くらいである。それ以外の類型では、長年かけて入念に解雇のための材料を集めないと解雇権濫用法理という労働者保護の究極法理によって解雇が無効にされてしまうのだ。

もし、解雇した労働者から解雇無効を争われた場合に裁判で無効が確定してしまったら、企業は解雇期間中の給料も利息も添えて労働者に支払わなければならない。仮に裁判で解雇が有効とされても、裁判に係る費用や労力は企業にかなりのダメージを与える。資金力や人的資源が豊富な大企業ならともかく、そうでない中小企業にとって従業員と解雇関係で争いが生じるのは企業の存続にかかる重大な問題となる。

そのため、コンプライアンス意識が高い企業ほどモンスター社員の解雇に踏み切れず、いつまでも企業に害を与え続けるモンスター社員を抱えこむはめになる。ブラック企業批判に対して、世間はこうしたモンスター社員を抱える企業に対してはあまり同情的でない。それは、会社が強者で労働者が弱者という見方が強いからだろう。

しかし、フリーエージェント社会の到来と言われるように、小規模経営のフリーランス・個人事業主は今後増加していくと思われる。将来、彼らが一人くらいのアシスタントを雇うようになったころ、モンスター社員問題は爆発すると思われる。彼らは所詮労働者が独立したようなレベルであり、モンスター社員を抱えるような経営体力はない。小規模経営では、もはや雇う側=強者、雇われる側=弱者という構図はなりたたないのである。それでも人を雇う以上、大企業と同じように労働法規による規制がかせられることになる。現在でも、商店街レベルの小規模零細事業者の間では、モンスター社員問題は経営上の重大問題となっているのである。