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法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

労働契約と請負契約(又は委託契約)の違い

企業が個人に仕事を振る方式としては、個人と労働契約を締結する方式と請負契約(又は委託契約)を締結する方式とが考えられる。企業と労働契約を締結した個人はサラリーマン・社畜などと呼ばれ、請負契約を締結する者はフリーランス・ノマドなどと呼ばれたりする。請負ではなく業務委託契約という名称が用いられることもあるが、委託契約は民法上の典型契約には存在せず、その内容も多義的であるので、今回は実質が請負契約であるものに絞って考えよう。

労働契約と請負契約では各種違いがあるが、企業側の目から見た場合の決定的違いは労働法規の規制を受けるか否かである。すなわち労働契約は各種労働法規の制約を受けるが、請負契約はそれを受けない。その他おおまかな違いは以下の通りである。

労働契約

  • 契約解除(解雇)が比較的難しい
  • 原則として残業代を支払う必要がある
  • 仕事中に発生した怪我などは労災となる
  • 使用者は各種社会保険加入の負担が必要
  • 給料に消費税はかからない
  • 給料は労働力の提供の対価として支払わる

請負契約

  • 契約解除が比較的容易
  • 残業代を支払う必要はない
  • 仕事中に怪我をしても原則自己責任
  • 請負報酬には消費税がかかる
  • 報酬は成果物への対価として支払われる

全く同じ労働力を提供してくれるという前提で、一個人に給料・請負報酬として同じ300万円を払うのであれば、請負契約としてして払う方が企業側にメリットがある。請負契約であれば、各種保険料の負担をしなくていいし、経営が悪化したときの切り捨てもしやすい。また、請負報酬に込みこみの消費税は税額控除できる。

では、企業としてはなんでもかんでも請負にすればいいかといったらそうでもない。結局、請負契約か労働契約かは、契約書などに労働契約か請負契約(又は業務委託契約)とか書いてあることによって決まるのではなく、その実態に即して決まるからである。すなわち、企業側がいくら請負だ業務委託だといいはっても、実態が労働契約であれば労働契約と判断され、労働法の規制を受けることになる。

労働契約か否かの判断は、指揮監督下の労働という労務提供の形態、及び、報酬の労務対償性によってなされる。

指揮監督下の労働といえるかは、雇われる側が個々の仕事の依頼等を自由に拒否できるか否か、仕事をするにあたって使用者から指揮監督を受けるか否か、業務をする場所や時間の拘束を受けるか否か、雇われる側が代わりの人を用意してもいいか否かなどにより判断される。

請負契約であれば、個々の仕事の依頼を受けるか否かは自由に決められるはずであるし、仕事を完成されることが目的なのであるから、個々の仕事のやり方や業務場所・時間を使用者に管理・拘束されるいわれはない。また、自分側で雇った人を使ってもよいはずである。こういう請負契約ならではの自由さがないのであればやはり労働契約であったということになりやすい。報酬が成果物ではなく労働時間を単位に計算される場合も労働者性を強める要素になる。

また、補完的に事業者性や専属制も労働者性の考慮要素となる。報酬が普通の従業員と大して変わらなかったり、業務に必要な機器などを使用者が無償で貸与していたりするなどの事情があれば事業者性を弱め労働者性を高める。他の会社の業務に関わることが制約されていれば専属制があるとして労働者性を高める。労働者性がきわどい事例ではこういった要素も細かくみていくことになるだろう。

労働契約か否かの判断は上記のようになされているが、世の中で業務委託や請負などという名目でなされている契約の中に、労働契約性の高いものはかなりあるのが現状だろう。現行法の枠組みで考える以上は、それらは是正されなければならない。

もっとも、現行の労働法規の規制はなかなか厳しいので、ビジネスの流動性が高い現代では企業が人を雇うというのは極めてリスクのある行為となっている。経営体力のない中小企業などは特にそうだ。そうすると正規従業員を雇うリスクのとれない企業が、派遣などの切り捨てのしやすい非正規雇用を増やすということは自然の流れであろう。結局、解雇規制の緩和などがなされなければ、ますます派遣などの非正規雇用が増えることになると予測される。

在宅勤務の労働者性についての参考サイト

在宅勤務についての労働者性の判断について|厚生労働省