法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

京大を公安がウロウロしていたことがなぜ話題になるのか

京都大学をウロウロしていた京都府警の公安捜査員が京大生とトラブルになった事件が話題になっていますね。どうやらデモ活動をしていた京大生が逮捕されたことに対する抗議活動が京大で行われており、それを監視にきていたようです。それを発見した学生が、捜査員を取り押さえて一悶着が起きたとのことです。京都大学側は「無断で警察官が立ち入ったことは誠に遺憾だ」旨のコメントを出しています。一方、京都府警は逮捕・監禁で捜査するとのこと。

ところで、公安の捜査員がウロウロしていたことになんで一部の京大生がキレているのだろうと思った人も多いと思います。治安を守ってくれてむしろ喜ばしいと思う人もいるでしょう。僕もどちらかというとそういう感想です。でも、ここには大学の自治という憲法問題が関わってきちゃうんですね。

1.大学の自治とは

学問の自由が憲法23条で保証されているという話は中学の公民などで勉強した人も多いでしょう。

憲法23条 学問の自由は、これを保障する。

憲法23条には大学の自治なんていう言葉は使われていないわけですが、学問研究の中心といえば大学なわけです。学問研究の場である大学の自主性を認めれば、間接的に学問の自由の保障に役立つことになります。そういったことから、研究者人事の自治と施設・学生の管理の自治が大学の自治として憲法上認められると考えられています。

大学の自治との関係で問題となるのが、警察権との関係です。大学も治外法権ではないので令状に基づく正当な捜査のための立ち入りは当然拒めません。問題となるのは、公安活動のための立ち入りです。公安活動は未だ発生していない犯罪の予防・鎮圧のための活動なので、国家が治安維持の名目で学問の研究の自由を侵害するおそれがでてきます。公安活動での大学構内への立ち入りが問題となったの次に紹介する東大ポポロ事件です。

2.東大ポポロ事件

今回の京大騒動について、東大ポポロ事件を持ち出して京大ポポロ事件などと呼んでる人もいるようです。大学受験の勉強をちゃんとやった人や法学部出身の人は聞いたことある人も多いでしょう。

東大ポポロ事件は戦後直後の昭和27年頃のお話です。東大の公認学生団体であるポポロ劇団主催の演劇発表会が東大内の教室で行われていたのですが、観客の中に公安活動中の私服警官がいました。それに気づいた学生が警官に暴行を加えてしまい、学生が暴力行為等処罰に関する法律違反で起訴されました。これが世にいう東大ポポロ事件です。

裁判では、公安の立ち入りが学問の自由と大学の自治を犯すものであり、学生の暴行は大学の自治を守るための正当行為ではないかということが争点となりました。一審・二審は学生の行為に違法性がないとして無罪判決を下しました。他方で、最高裁は東大ポポロ劇団の発表会は学問研究のためのものでなく、政治活動のためのもので公開されてる集会だから大学の自治を享有するものではないとして、一審・二審判決を破棄し、一審に差戻しました。問題の学生は結局有罪になって終了です。

私服警官を見破れる学生というのもなかなかのもんですね。なんで揉めるのかと思う人もいると思いますが、公安ともめる学生というのはいわゆる左翼活動家の方々です。大学時代にそれらしい活動家学生をみたという人もいるでしょう。

最近の学生は大人しいなどといいますが、今回の京大事件をみる限りそんなことはないのかもしれません。僕の大学時代にも似たような左翼学生団体はあり、何かと香ばしい話題を提供してくれていました。公安にマークされるくらいなので、平穏な人生を送りたいなら新入生さんたちはこういった団体に近づかないようにした方がいいですね。

今回の事件の詳細はよくわかりませんが、京大のコメントによると立ち入りの際は事前通知するという約束があるのに公安が無断で立ち入ったようなので、京都府警も分が悪いかもしれません。京都府警側が学生を監禁罪で立件したら泥沼展開に入りそうです。