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法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

酌量減軽とは?窃盗症の万引き犯が酌量減軽された件

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万引きを繰り返して常習累犯窃盗で起訴された主婦に酌量減刑がされたというニュースがありました。

「窃盗症」主婦に酌量減軽 静岡地裁判決 (@S[アットエス] by 静岡新聞) - Yahoo!ニュース

ローカルニュースとはいえ、この程度の事件が報道されるのかと思いましたが、せっかくなので酌量減刑の制度についてみていきましょう。

今回起訴された主婦の罪名は常習累犯窃盗罪です。とりあえず条文を確認。

盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律

第2条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条 、第二百三十六条、第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ竊盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上、強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期懲役ニ処ス

(略)

第3条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法 各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル

いいかげん口語化してもらいたい条文ですね。今回の主婦が問われているのは3条の罪と思われます。3条は要するに過去10年間に3回以上窃盗で6月以上の懲役刑を受けた人は2条と同じ刑罰、すなわち懲役3年以上の刑に処するというものです。

通常の窃盗罪の有期懲役刑の下限は1月・上限は10年なのに対し、常習累犯窃盗罪は下限は3年・上限は20年なので、かなり重くなっています。

裁判所は法定刑の範囲で判決を言い渡すことになりますので、常習累犯窃盗罪が成立したら基本的には3年~20年の範囲の懲役刑を言い渡すことになります。もっとも、一定の場合には、刑の範囲が増減します。例えば、自首した場合や未遂(中止)犯の場合は刑を減軽することができるっていうのはよく知られているいますね。逆に、再犯だったり罪が2つ以上あるような場合(併合罪)は刑が加重されてしまいます。

酌量減軽は刑を減軽することができる場合の一つです。

刑法66条 犯罪の情状に酌量すベきものがあるときは、その刑を減軽することができる。

酌量減軽がされる場合は、法定刑の下限でも刑が重すぎると考えられるような場合です。そんなに頻繁に適用されるものではありません。酌量減軽が適用されると、有期懲役刑の下限と上限がそれぞれ2分の1まで軽くなります。本来の下限が3年であれば、適用後は下限が1年6月にまで下がるということですね。

今回の事件も、裁判所は本来下限が3年の常習累犯窃盗罪に対し酌量減軽をして1年8月の懲役刑を言い渡しています。

報道を見る限り、今回の事件では被告人の主婦がクレプトマニア(窃盗症)と診断されていることも酌量減軽の考慮要素になったみたいですね。クレプトマニアとは精神疾患の一種で窃盗をしたいという衝動を抑えられない病気です。普通の人が窃盗をするときは、盗みによって経済的利益を得ることが目的ですが、クレプトマニアの人たちは経済的利益を得たいから盗みをするわけではありません。窃盗をする際の緊張感や盗んだ後感じる快感を味わいたいといった依存症みたいなものです。

今回酌量減軽がなされた要素としては、こういう病気の人に必要なのは長期の懲役刑よりも適切な治療という判断が一定程度あったのでしょう。