法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

株式交換って何?経済ニュースを読むための基礎知識

イオンが子会社のダイエーを完全子会社化する予定みたいです。

イオン:ダイエーを完全子会社化へ 上場も廃止の見通し - 毎日新聞

イオンは現時点でダイエーの株を5割弱保有しています。ダイエーを完全子会社化するには、イオンはダイエーの残りの株も全て取得しなければなりません。そこで、今回イオンは株式交換という手続を使ってダイエー株の100%取得を目指します。

ところで、株式交換の意味ってわかりますか?思い起こせばこのブログは株日記として設立されたものでした。そこで、今回は原点に立ち返り、株式交換についてみていきたいと思います。TOBやMBOとかいう用語は覚えたけど、株式交換はまだって人はこの際に確認しておきましょう。

株式交換とは文字通り株を交換すること

株式交換は、完全子会社となる予定の会社の発行済み株式の全部を完全親会社になる会社に取得させることをいいます。子会社の株主から株を取得する対価として、親会社は子会社株主に対し親会社の株を交付します。このように外見上子会社の株と親会社の株を交換しているようにみえるので、株式交換という呼び方がされています(*1)。もっとも、株式交換のポイントは株の交換の方ではなく、子会社株を親会社株に全て取得させる点にあります。

上場会社の株を取得しようと思うと、普通は市場で調達することになりますが、これはあくまで売ってくれる株主がいることが前提となっています。そのため、多数の株主がいる上場会社の株を市場で100%取得することは事実上不可能です。この点、株式交換の手続を使えば株を手放すことを渋る株主からも強制的に株を取得できます。ですので、株式交換は買収による完全子会社化の手段として広く使われます。

もっとも、株式交換を行うには被買収会社(完全子会社となる会社)においても株主総会の特別決議(議決権の3分の2)を可決しなければなりません。そのため、被買収会社の支配権を確保するため株式交換に先立ちTOB(公開買付け)による株の取得が先行する場合があります。このようにTOB、株式交換という二段階の過程を経る買収を二段階買収といいます。なお、敵対的買収者が二段階目の買収における条件を公開買付け時よりも被買収株主に不利に設定することを予定して公開買付けを行うことを強圧的二段階買収などと呼んだりします。

いわゆるMBO(マネジメント・バイアウト、経営陣がその会社を買収すること)でも二段階買収がなされることがありますが、この場合の二段階目は全部取得条項付種類株式の制度を利用して残りの株式を取得することが多いです。この場合、まず公開買付で株の大半を経営陣が取得し、定款変更で株式を全部取得条項付種類株式に変更します。そして、取得できていない株式が1株未満の端数になるように全部取得条項付種類株式○○株あたり、普通株式1株を交付するという条件で全部取得条項付種類株式を取得します。そうすると、残りの株はすべて1株にみたないので現金化して消し去ることができ、完全子会社化を実現できます。

これらの株式交換や全部取得条項付種類株式を用いた一連の少数株主の閉めだしをカッコイイ横文字でスクイーズ・アウトと呼びます。

*1 もっとも、会社法上子会社の株式の代わりに交付することができるものは親会社の株式に限定されていないので、代わりに交付されるものが株式でない場合は株式交換という呼び方は実態とは異なることになります。

株式交換による組織再編のメリット

株式交換も合併と同じ組織再編行為の一種ですが、株式交換による完全子会社化の長所は以下の点にあります。

  1. 合併と異なり、債務を承継しないのでリスクが限定されている(最悪株が0円になるだけ)
  2. 完全親会社と完全子会社の法人格は別なので、両会社の社内システム(就業規則等)を統合しなくてよい

また、子会社の上場を廃止して完全子会社化するメリットとしては、他の株主からの干渉を受けずに子会社の経営ができること、子会社の取締役会等に親会社の経営陣を送り込んで子会社の経営の監督ができることなどが挙げられています。