法廷日記

浦部孝法の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。

住宅ローンを組んだことを後悔する5つの場面

夢のマイホームを購入するときほとんどの人が住宅ローンを組むことになる。この住宅ローンであるが、組んだ後に後悔をする人が後をたたない。夢のマイホーム購入は決してバラ色の人生が待ち受けているとはいえないのである。

住宅ローンを組んだ場合、次のような場面で後悔する人が実に多い。

ご近所トラブルが発生した場合

ご近所づきあいが希薄になった昨今、ご近所トラブルが後を絶たない。騒音、異臭、境界、ごみ屋敷、覗き、盗み、いじめ等、そのバリエーションはさまざまである。ご近所トラブルは個人間の紛争の中でも弁護士もお手上げの最も解決が困難な類型の紛争である。一たび深刻なご近所トラブルが発生してしまったら、基本的にはどちらかが引っ越すしか解決策はないと思ってよい。賃貸であれば多少の引っ越し費用を負担することで難を逃れることができるが、住宅ローンに縛られていてはそうはいかない。

ご近所トラブルは事前に調査をしても避けられるものではない。トラブルに巻き込まれるときは避けようがないのである。

欠陥住宅であった場合

欠陥住宅といえば、近時の旭化成のくい打ちデータ改ざん事件が記憶に新しい。清水の舞台から飛び降りるつもりでマイホームを購入しても、欠陥住宅であったら目もあてられない。くい打ちデータ改ざん事件では販売元の三井不動産レジデンシャルを始め、関与した企業が資金力豊富な最大手であり、補償は何とか受けられそうであるが、これが地方の小規模・中堅ハウスメーカーやマンションデベロッパー、建設会社ではそうはいかない。そのような中堅企業では建替えレベルの欠陥が一たび判明すれば倒産してしまう。

立て直しが必要なレベルの欠陥は稀として、雨漏りや結露といった欠陥はしばしばみられる。賃貸であれば引越せばすむ話であるが、マイホームではやはりそうはいかない。

離婚することになった場合

3組に1組が離婚するといわれる時代、住宅ローン問題に直面する機会が最も多いのは離婚である。マイホームは家族がMAXの時に最適化された間取りで建てられるため、家族が減った離婚後には使いづらい物件となる。

離婚する際、住宅ローンの付いたマイホームをどう処理するかは最も悩みのタネになる。離婚事件を受任する弁護士としては、住宅ローン付のマイホームが資産としてある場合は着手金を3、40万円くらいは上乗せして欲しいのが本音だ。それくらい面倒なのである。

住宅ローンがある場合は、離婚時の財産分与に銀行が第三者として関係してくるので、当事者同士の話し合いではすまなくなる。銀行の承諾なく、居住者や不動産の名義、ローンの名義を変えることは住宅ローン契約上は禁止されており、銀行も容易に承諾はしない。そのため、当事者同士で柔軟な財産分与をすることは困難となり、離婚手続きが長期化することも珍しくない。

転勤することになった場合

大企業に勤めている場合、県外・国外に転勤することはしばしばあることである。しかし、住宅ローン付マイホームがあると家族そろっての転居は困難にあることが多い。この場合、多くの人がいわゆる単身赴任をすることになる。単身赴任をすることになると、会社からの多少の補助はあるものの、家族の二重生活により生活費の負担が大きくなってしまう。さらに、単身赴任による家族の離散に伴い、家族仲が破壊されやすくなる。そして、離婚につながり住宅ローン付マイホームの財産分与の大問題に発展する。

災害・事件が起きた場合

日本は地震、水害、原発といった災害大国であり、常に災害の危険にさらされている。災害が起きた際も、住宅ローン付マイホームの存在が生活再建の足かせになることが多い。

また、マイホーム近辺で殺人事件や暴力団の抗争などの嫌な事件が起きた場合も、住宅ローン付マイホームに住んでいる場合は容易に引っ越しはできない。

住宅ローンを組んでよかったことは?

さて、住宅ローンのネガティブな側面ばかり取り上げてきたが、逆に住宅ローンを組んでよかったとよく聞く場面もある。それはどんな場合かというと、ローン名義人の夫が死んで住宅ローンが夫の団体信用生命保険でチャラになったという場合である。

通常、住宅ローンを組む場合には、ローン名義人が死亡した場合に備えて、生命保険に加入する。まさに命がけで住宅を買うということだ。

そこまでして、みなさんは住宅ローンを組んでまでマイホームを購入したいのだろうか。

募金詐欺、堂々と記者会見してメディアも騙される

なかなか大胆な募金詐欺行為が行われたようである。

6歳児の心臓移植「うそ」募金呼びかけた女性が謝罪 - 社会 : 日刊スポーツ

小学1年生の男児に心臓移植が必要であるとして、男児を救う会の代表の叔母が募金を募っていた件で、心臓移植が必要との事実は全くなく詐欺であったことが発覚した。叔母は、わざわざ厚労省の記者クラブで記者会見までし、一部メディアが募金呼びかけの報道をしてしまったようである。

男児やその両親は叔母による募金活動を全く知らなかったようであり、完全にとばっちりを受けた形らしい。報道では謝罪したというところで終わってしまっており、叔母の刑事立件については詳細が不明であるが、これは完全な詐欺罪である。悪質性も高く、既に相当額の入金がなされていたなら実刑も十分考えられる事案であろう。

ところで、単なる募金詐欺であれば足のつきにくい街頭募金でもやってればいいのにと思うところであるが、今回の被疑者は実在する甥の名を明らかにして記者会見までやっている。記者会見を利用しようという発想自体、なかなか素人では出てくるものではなく、おそろしく大胆な犯行である。

それにしても、今回の事件でマスコミの記者会見ベースの報道では全く裏付けなんてされていないことが明らかになった。今回の事件では、マスコミが両親に直接裏をとれば被疑者を後押しするような報道をしなくてすんだものの、全く裏付けをとっていないため見事に被疑者に利用されてしまった形になる。

マスコミの記者会見ベースの報道なんて信用できるものでなく、話半分に聞いておくべきものであることが本件により確認された。

トランプ大統領が教えてくれたギャップの重要性

昨日のアメリカ大統領選ではメディアの大方の予想に反しドナルド・トランプ候補が次期アメリカ大統領に選出された。

数々の暴言や排外主義、保護主義的な経済観がメディアに取りざたされ、トランプ氏が大統領に選出されたら為替は1ドル90円台、日経平均は1万5000円まで下がるといった評論が数々打ち出された。

実際、トランプ氏が優勢との選挙速報が出されるやいなや、予想通りNYダウ先物は700ドル超の下げ、日経平均も一時1000円超安、ドルも円に対し101円まで売られ、市場は大混乱に陥った。

しかし、トランプ氏が勝利演説をしたとたん風向きはいっきに変わった。トランプ氏の勝利演説の内容はこうだ。

ヒラリーの国への献身に心から感謝

全ての人に手を差し伸べる、アメリカ国民は一致団結しよう

全ての国に公正に対応し、パートナーとして活動する

トランプ氏はこれまでの報道とは打って変わり極めてまともな演説に終始した。この演説を受け、市場の評価は一転し現時点までドルは105円超まで買われ、日経平均も900円超上昇している。

トランプ氏の勝利演説はあたりさわりのない極めてまともなものであるが、格別優れているとか際立ったものは見受けられない。ちょっとした優等生が用意するような内容である。

にもかかわらず、どうしてトランプ氏の評価が一転したのだろうか。それはトランプ氏が作り出したギャップによるところが大きい。

トランプ氏は数々の侮辱的、差別的発言を繰り返すことで、「こいつは排外的でとんでもない奴だ。」との印象を国民に与えることに成功した。この時点でトランプ氏のイメージのマイナスへの振れ幅は非常に大きい。トランプ氏はその状態を認識しつつ、態度を変え、ニュートラルな極めてまともな状態に戻すことで、マイナスから0までの大幅な上げ幅を作り出したのである。

これは、不良がたまにまともなことをすると、客観的には大したことでなくても過剰に称賛される現象と同一である。人の評価は、感情によるところが大きいので、絶対的な数値のようなものでなく、相対的なギャップが重視される。トランプ氏はこの相対的なギャップを作り出すことで、ここぞというときに大したことをしなくても高い評価を得たのである。事実彼は格別すごいことは何もしていない。ただまともことを言っただけである。

このトランプ氏のギャップ創出手法はビジネスでも応用できる。顧客は期待以上の効用を得られたときに深く感動し、その店のファンになる。逆に顧客の期待を下回ったときは、そのサービスが業界の平均水準以上であっても顧客は失望し、その店には二度と来ない。そのため、ファンを作るためには顧客の期待水準をあらかじめ下げておくことが重要なのである。

トランプ氏はそのようなビジネスの常とう手段を見事に大統領選で披露し、盤石な政権を作る基礎を作ったといえよう。トランプ大統領にとっての顧客は国民であり、大統領になる前にあらかじめ国民の期待値を下げておいたことで、今後彼は普通のことをしているだけでも評価されるようになる。